Outlanderファン必読!ジェイミーを探しにスコットランドに出かけたアメリカ人女性の抱腹ロマンチックコメディ Finding Fraser

著者:Kc dyer
ペーパーバック: 382ページ
出版社: Lions Mountain Literary (2015/5/15)
ISBN-10: 0994081707
発売日: 2015/5/15
適正年齢:PG15(わずかでマイルドだが性的なジョークとシーンがある。多くのYAよりマイルド)
難易度:中級
ジャンル:ロマンチックコメディ/Chick-lit/ロマンス
キーワード:Outlander(邦訳:時の旅人クレア)、スコットランド、ロマンス、自分探しの旅

オンラインデートサイトで出会った結婚相手の浮気で離婚したEmmaは、29歳の誕生日にスターバックスのバリスタの仕事も首になり、所持品をすべて売り払ってスコットランドに行く決意をする。

スコットランドへの旅の目的は、19歳のときに読んで恋に落ちたOutlanderの主人公Jamieを見つけることだ。Jamieが架空の人物だということはEmmaも承知している。彼女が探し求めるのは、ClairにとってのJamieのように、一生をかけて愛することができる理想的な男性なのだ。

Jamieを見つけに行くテーマのブログへのフォロワーもでき、スコットランドの体験を楽しみ始めたEmmaは、次々と小さなトラブルに巻き込まれる。けれども、ボロボロになって辿り着いた小さな町で風変わりな住民たちの優しさに恵まれ、ウエイトレスの職とJamieのようにたくましいスコットランド人のボーイフレンドもみつける。けれども、Emmaの人生はそう簡単にハッピーエンドにはならないのであった……。

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Outlander時の旅人クレア)という歴史ロマンス小説はただのロマンス小説ではないし、ファンもただのファンではない。最近ではTVドラマも始まり、熱狂を超えたファンのクレイジーさに磨きがかかってきている。(テレビドラマや映画化に原作ファンが失望することが多いが、Outlanderに限っては、ほとんどの原書ファンがこのドラマ化を情熱的に応援している。キャスティングも良いが、監督が原作者をアドバイザーとして重視しているところもあるだろう)。

Outlanderの第一巻が出版されたのは1991年で、それが爆発的に売れてからスコットランドのハイランダーを主人公にした歴史ロマンス本が山ほど作られてきた。それだけでサブカテゴリになるほどの人気だが、ほとんどがOutlanderのJamieまがいのハイランダー戦士を主人公にした出来損ないコピー(ファンフィクションまがい)だ。

だが、このFinding Fraserは、そういったロマンス本ではない。

どちらかというと、”Eat, Pray, Love”のような「自分探しの旅」小説である。でもGilbertの本よりずっとユーモアがあって軽く読める。

主人公はスコットランドに出かける前から魑魅魍魎のようなOutlanderファンの集団にショッキングな洗礼を受け、スコットランドでもクレイジーなアメリカ人観光客から逃れられない。シカゴという都会から来たくせに、海外旅行の経験がないから田舎者のように騙されたりトラブルに巻き込まれる。
それらのシチュエーションが鮮やかに目に浮かび、何度も吹き出してしまう。

英語が母国語のアメリカ人にとってもスコットランド人が話す英語は外国語だし、スコットランドは勝手がわからない異国なのだ。Emmaの目を通してそれを体験するのも、日本人読者にとっては面白いと思う。

筋書きには関係ないが、ブログのコメント欄を気にするEmmaの心理が正直でいい。そして、Emmaのブロガー魂を支えたフォロワーがHiho Kittyという札幌在住の日本人というのも、奇妙に心温まる(このKittyはちょっと変な人だけど)。Outlanderの読書会を札幌で主催している熱狂的日本人ファンって、モデルがいるのだろうか?(自分がモデルだと思う人は名乗りでてくだされ)

この軽いラブコメを成功させているのは、Emmaがナイーブなだけでなく、イノセントなところだ。
人を信じる癖があり、すれていない。自信がないけれども、そこでグジグジして他人を恨まずに一生懸命努力している。自分をさほど評価していないようだが、静かにやることはやっている感じなのがいい。そういう主人公が最後に幸せを見つける筋書きは、最初から見えていても許せるものである。

Outlanderのファンはもちろん、心が疲れている人にお薦めのラブコメ。

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