著者:Amy Stewart
ハードカバー: 416ページ
出版社: Houghton Mifflin Harcourt
ISBN-10: 0544409914
発売日: 2015/9/1
適正年齢:PG12(妊娠出産の話題はあるがシーンの描写はない)
難易度:上級
ジャンル:歴史小説(20世紀初頭のアメリカ)/サスペンス
キーワード:ニュージャージー、ギャング、警察、銃、女性警官
工業が飛躍的に成長した結果、雇用者と労働者との格差が広まってきた第一次世界大戦前夜のアメリカが舞台。
Kopp姉妹は、当時には珍しく町から離れた農家で女3人だけで暮らしていた。オーストリアからの移民だった厳格で疑い深い母の影響もあり、周囲の人々と関わらない孤独な生活に満足していた。
ある日、姉妹が乗る馬車に、裕福な絹工場のオーナーHenry Kaufmanの車が衝突し、馬車が破損してしまう。長女のConstanceはKaufmanの工場に赴いて請求書を渡すが、Kaufmanは支払いをするかわりに姉妹の家に煉瓦を投げ込み、末娘を誘拐してシカゴに売春婦として売ることを匂わせる脅迫状を送りはじめる。
ついにその脅迫は銃撃にまで発展し、シェリフのアドバイスで姉妹は銃を持ち運ぶようになる。
*** *** *** ***
この作品は、これまでWicked Plants(邦題:邪悪な植物
)などのノンフィクションを書いてきたAmy Stewartにとっては初めてのフィクション挑戦で、5月末のBook Expo America(BEA)で話題になっていた文芸小説のひとつでもある。
1914年にニューヨーク市近郊のニュージャージー州で実際に起こった事件を元にしており、事件をきっかけにアメリカの歴史で最初の女性警官のひとりになったConstanceは、身長180センチで一般の男性より体格が良かったという。
結婚もせず、姉妹3人だけで人里離れた農家に住んでいるというのもこの時代のアメリカでは珍しいことだった。そんな三姉妹が、リッチでパワフルな工場のオーナーを相手に勇敢に戦っているというのは、メディアにとって「おいしい」話題だったに違いない。
隠れた歴史を知るのは面白い。
期待して読んだのだが、いまひとつ物足りなく思った。
まず、ペースがゆっくりすぎる。そして、登場人物のキャラクターがやや「薄味」だ。
せっかく興味深いテーマなのに、ぐいぐいと引き込んでくれる感じがないのだ。
また、この手の歴史小説では(男性の著者であっても)多少のロマンスが含まれているのだが、それはまったくない。だから、大人の女性が主人公なのに、11歳の少女Flaviaが主人公のミステリシリーズのような雰囲気だ。ロマンスなんかなくてもいいが、Constanceがどんな女性なのかがイマイチ見えてこなかったのは残念だ。
それと、これを読んで「ほら、やっぱり自分の身を守るためには銃が必要だわ」というお馬鹿なアメリカ人読者も出てきそうで、それも心配である。