70年前にコーンウォールで起きた家族の悲劇の真相は……? Kate Mortonの新作『The Lake House』

著者:Kate Morton
ペーパーバック: 608ページ
出版社: Mantle(英国),Atria(米国)
ISBN-10: 1447260287
ISBN-13: 978-1447260288
発売日: 2015/10/22
適正年齢:PG12(中学生以上、性的なニュアンスあり)
難易度:上級レベル(ネイティブの普通レベル)
ジャンル:文芸小説(大衆小説)/歴史小説
キーワード:コーンウォール、家族の秘密、第一次世界大戦、誘拐、ミステリ、ラブストーリー

(左の画像をクリックするとアメリカのアマゾンに、右は日本のアマゾンに行きます)

第一次世界大戦の傷跡がまだ残る1933年、イギリスの南部コーンウォールにある裕福な夫婦の家から11ヶ月の男児が姿を消した。屋敷はおりしもミッドサマーの催しの最中で、屋敷には多くの客が集まっており、夫婦の最愛の息子がいないことに気付いたのは、ずっと後になってからだった。

当時16歳だった次女のAlice Edevaneは、弟は誘拐されて殺害されたと信じ、その原因を作ったのは自分だと思っていた。観察力と創作意欲があったAliceはその後有名なミステリ作家になったが、70年間重い秘密を胸に抱え、罪の意識から逃れることはなかった。

そのAliceの平穏を揺るがしたのは、女性刑事のSadie Sparrowだった。

打ち切られた事件に納得できずマスコミに情報を漏洩し、ロンドンの警察署から「自主休暇」を取らされたSadieは、祖父が引っ越したコーンウォールにしばし身を寄せていた。その最中に見つけた古い屋敷と、そこで起きた迷宮入りの事件に興味を抱いたSadieは、職場復帰の希望が見えなくて不安な心をなだめるためにも、Edevane家の事件を解決しようとする。

Sadieからの度重なるリクエストを無視していたAliceだが、自分が知らなかった母の情事を姉から聞かされ、もしかすると自分が70年抱えてきた「秘密」は真実とは異なるのではないかと思いはじめる。

そして、運命がAliceとSadieを引き寄せ、70年前の秘密がしだいに明らかになっていく……。

*** *** ***

Kate Mortonの作品はデビュー作からすべて読んでおり、2009年に始めた「これを読まずして年は越せないで賞」では彼女の『The Forgotten Garden』を大賞に選んだ。英国の古い屋敷と家族の秘密が出てくるMortonの作品は、私の大好物だ。

ただ、Mortonの小説には悲劇が多い。救いようのない悲劇で、読んだ後しばし鬱々としてしまうことがある。その危険があるので、超忙しいときの息抜きとしては読まないことにしていて、今回も日本帰国とその間にたまった雑用と原稿を片付けてから「ご褒美」として読むことに決めていた。

ようやく今日読了してびっくりしたのだが、この『The Lake House』は、けっこうハッピーエンドなのだ。過去と現在を行き来しつつ秘密を明らかにしていく手法とか、悲恋があるのはいつもと同じだが、ミステリ色とロマンス色が強めで、しかも救いがある。「”coincidence”は気に入らない」といったことを登場人物に何度も言わせるわりには、運命的な出会いや繋がりが多いし、出てくるのも、ほぼいい人ばかりだ。

というわけで、小説としての完成度はいまひとつだが、読後感がこれまでで一番明るいのは魅力だ。ちょうど疲れているときだったので、湖沿いのコーンウォールの屋敷でゆったりさせていただいた私には、まったく文句はない。

 

 

3 Comments

  1. 私にとってMortonは二冊目ですが、けっこう苦労してようやく読み終わりました。
    ビジネス英語からはいった者にとって、豊かな自然描写はなかなか語彙力がついていかない、ということもあります。
    しかし、1ヶ月、濃密な世界に浸ることができました。
    舞台となっているCornwall、The Forgotten Gardenの舞台でもあり、かのRebeccaの架空の城館Manderleyのモデルといわれる城館も存在するんですね。

  2. お疲れさまでした!
    でも、ビジネス英語からKate Mortonにいきなり、とはすごいですね!それを1ヶ月かけて読まれたというのは、1ヶ月もあの世界にどっぷり浸られたわけで、読まない人にはわからない貴重な体験だったのではないかと思います。
    Cornwallは私にとっても思い出深い場所です。私は、それを思い浮かべながら読みました。

コメントを残す