パラレルに存在するロンドンを旅する魔術師 A Darker Shades of Magic

著者:V.E. Schwab
ペーパーバック: 400ページ
出版社: Titan Books Ltd (2015/2/27)
ISBN-10: 1783295406
発売日: 2015/2/27
適正年齢:PG12(バイオレンス)
難易度:中級〜上級レベル(ファンタジーのジャンルに慣れていないと状況を把握しにくいだろうが、文章はシンプルで短い。)
ジャンル:YAファンタジー
キーワード:魔法、ロンドン、YA、パラレルワールド

ディストピア、人類を救うために命をかける勇敢なヒロイン、ヒロインを愛する二人の(ハンサムな)若者、バンパイア……。YAファンタジー(SFを含む)の流行で、こういったステレオタイプの小説が巷に溢れている。
そういった本にそろそろ飽きている読者が注目している作家が、V.E. Schwabだ。

Schwabは、イギリス人の母とビバリーヒルズ出身の父の間に生まれ、アメリカ南部で育った若い女性作家で、最近はスコットランドの大学院で勉強していたようだ。
そんな彼女が書いたDarker Shades of Magicの舞台はロンドン。しかも、パラレルワールドでいくつも存在するロンドンである。そのうちのひとつは、私たちに馴染みがあるジョージ3世が住むロンドンだ。(後年に精神性疾患を患い、「Mad King George」というありがたくないニックネームで呼ばれた国王。植民地だったアメリカを独立戦争で失ったのもジョージ3世)。

Darker Shades of Magicのロンドン(複数)には魔法が存在するが、ロンドンにより魔力は異なる。ジョージ3世が住むロンドンは、魔法がほぼ枯渇した退屈なGrey Londonで、主人公の魔法使いKellが育ったのは、魔法がまだ豊かにあるRed Londonだ。White Londonは競争相手をすべて抹殺した者が支配する恐ろしい世界で、魔力はほとんどない。かつて存在したと言われるBlack Londonについては、口にすることさえ恐れられている。

普通の人間はこれらのパラレルワールドを行き来することはできない。Red Londonの王家に引き取られて育ったKellは、現時点ではその能力を持つ唯一の魔法使いであり、支配階級の外交文書を届けるために毎月Red、Gray、Whiteを渡り歩いてきた。異なるロンドンの間でそれ以外の物を交流するのは厳しく禁じられていたが、Kellはその規則を無視して小さな土産物をこっそり持ち帰っていた。だが、あるときそのためにトラブルに巻き込まれ、RedからGreyのロンドンに逃げ込み、そこで若い女泥棒Delilah Bardに出会う……。

正義感には無縁のKellと、それに輪をかけて倫理観が危ういDelilahの二人は、これまでによくあるYAファンタジーの主人公たちとはずいぶん異なる。世界観が新鮮で、予想外に恐ろしいこともけっこう起き、スピーディな展開だ。

たしかに面白いのだが、絶賛するほどではないと感じるのは、たぶん私がThe Lies of Locke Lamoraのシリーズのファンだからだろう。KellにはLockeと同じような雰囲気があるのだが、Lockeのスムーズさには勝てない。

でも、最近のYAファンタジーに飽きている人にはお薦めの新シリーズである。
続きのBook 2は2016年2月発売予定。

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