2015年最も注目されたYAファンタジー Six of Crows

著者:Leigh Bardugo
ハードカバー: 465ページ
出版社: Henry Holt Books for Young Readers
ISBN-10: 1627792120
発売日: 2015/9/29
対象年齢:PG 12(性奴隷や売春宿についての言及はあるけれど、キス程度で際どい描写はない)
難易度:中級〜上級レベル(文章そのものはシンプル。ファンタジーに慣れている人なら簡単だが、慣れていない人には状況がつかみにくくて読みにくいだろう)
ジャンル:YAファンタジー(三部作の第一巻)/スリラー
キーワード:Shadow and Bone(Grisha Trilogy)、魔法、戦い、ギャング、heist

国際的な商取引が行われる都市Ketterdamには、表社会を操る商人と裏社会を取り仕切るギャングが共存している。その社会で犠牲になった子どもたちは、生き残るために純真さを捨てて狡猾になる必要がある。

Ketterdamで、それを最も巧みにやり遂げたのが17歳の少年Kaz Brekkerだ。”Dirty Hands”というニックネームは、自分の利益のためなら盗みでも殺しでも平然とやってのけるところから来ている。

ある日Kazは富と権力を持つ商人から不可能としか思えない依頼を受ける。
報酬の巨額さと、死んだ兄の復讐を容易にするために、Kazはチームを集める。

誘拐されて売春宿に売られKaz(のボス)からスパイとして買い取られた16歳の少女Inej。ギャンブル好きで借金だらけのスナイパーJesper。母国の敵である魔物Grishaの少女に恋をして裏切られ、復讐を誓う服役囚Matthias。自分の失敗で牢獄に閉じ込められた若者を救うためにスラムに残ったGrishaの少女Nina。そして冷酷な商人の父の元から逃げた出来損ないの息子Wylan。いずれも、愛や友情ではなく、個人的な動機でKazの計画に加わった。

互いを信頼する理由など何もない6人は、難攻不落と言われるIce Courtに忍び込み、多くの国が奪い合う重要人物を盗み出そうとする……。

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Grisha Trilogy(感想をブログに書いていると思い込んでいたのに、探したらなくてびっくり!信じられないことに、書きそびれていたらしい……)でYAファンタジーの人気作家になったBardugoの新三部作で、舞台は前作と同じく帝国時代のロシアから発想を得たRavkaと魔力を持つGrishaが住む世界だ。YAファンタジーのカテゴリだが、内容はThe Lies of Locke Lamora(あるいはオーシャンズ・イレブン)を連想させるスリラーの雰囲気がある。

ごく最近のYAファンタジーの潮流を代表する作品であり、これまで流行った「スーパーヒロイン」とかっこいい2人の男性ヒーローとの三角関係、というパターンではない。個性がある複数の主要人物の多角的視点でひとつのストーリーを伝えるというもので、それはなかなか面白い。プロットも近年流行ったYAファンタジーより複雑で、読みごたえがある。そこが、これだけ多くの読者から高い評価を得ている理由だろう。

だが、The Lies of Locke Lamoraのシリーズ(これもレビューを書きそびれているようで唖然!)を読んでいる読者にはたぶん物足りないだろう。Kazはなかなか興味深い人物だが、Lockeほど口がうまい詐欺師ではないし、過去もさほど複雑ではないからだ。詐欺やハラハラのレベルも全然ちがう。

でも、YAファンタジーだけを読んできた読者にとっては「こんなYAファンタジーもあるのか!」と驚き、興味を抱くことだろう。読者の幅を広げてくれるという意味で、評価したい作品だ。

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