映画化でエマ・ワトソンが主人公を演じ、製作にも関わるファンタジー三部作 The Queen of the Tearling

著者:Erika Johansen
ペーパーバック: 464ページ
出版社: Harper Paperback
ISBN-10: 006229038X
発売日: 2014/7
適正年齢:PG 15(性的コンテンツあり。高校生以上)
難易度:上級(だが、文法的にはシンプルで、センテンスも短い。文体に慣れれば読みやすい文章)
ジャンル:SF・ファンタジー
キーワード:魔力、魔法、呪い、ディストピア、王座、陰謀、戦国物語、冒険、ミステリ、ロマンス

人里から遠く離れた森に隠されていたTearling王国の王女Kelseaは、二人の老いた守護者以外の人間に会ったことがなかった。だが、19歳の誕生日に9人の護衛が森を訪れる。Kelseaが女王の座につくときがきたというのだ。

何年も前に亡くなったKelseaの母、Elyssaは、美貌で知られていた女王だった。Elyssa女王直属の護衛だった彼らは、まったく母親に似ていない新女王を見て驚く。友達もなく、森の中を自由に駆けまわって育ったKelseaは、健康的に太っていて、平凡な顔だったからだ。

母親の記憶がまったくないKelseaは、先代女王の護衛と城に向かう旅に出るが、そこには彼女の命を狙う数々の敵が潜んでいた。Tearling支配を狙う隣国の残酷な女王Red Queenは、Kelseaが母から受け継いだ二つのエメラルドの首飾りを奪おうとし、母の弟の摂生皇太子は自分の地位を守るためにKelsea暗殺を図る。そのうえ、Kelseaよりずっと年上の先代女王の護衛たちは、19歳の少女の命令に従おうとしない。魔力を持つエメラルドの首飾りも、その歴史と影響は謎めいたままだ。

大人気の、A Game of Thronesを少し連想させるような、王座や隣国の侵略をめぐる戦いが中心のファンタジーなのだが、それに加えてディストピアSFや、ミステリ、少女が大人になる「成長物語」の要素もあり、盛りだくさんだ。

ディストピア状態になった近未来のアメリカを脱出したグループが辿り着いた「新ヨーロッパ」の300年後という設定で、状況は中世にそっくりだ。この1部では、「なぜわざわざ現在の文明が崩壊した後の世界にしたのか?」と疑問に思う読者はいるだろう(私の知人もそうだった)。だが、その理由は、2部のThe Invasion of the Tearlingで明らかになってくる。

「母のように容貌を気にする女はくだらない」と言い聞かせながらも、平凡な顔で太っていることを密かに気にしているKelseaは、よくあるYAファンタジーの「できすぎた女主人公」より本物らしい。それ以外にも、皆から恐れられている護衛のMace、残酷だが精神的に脆弱なところもあるRed Queenなど、登場人物すべてが複雑に作られているのがいい。

ハリー・ポッターでハーマイオニーを演じたエマ・ワトソンが惚れ込んだという作品で、主人公のKelseaを演じるだけでなく、エグゼクティブ・プロデューサーとして製作の裏方にもあたる。

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