2016年ヒューゴー賞受賞作 The Fifth Season

著者:N.K.Jemisin
ペーパーバック: 512ページ
出版社: Orbit
ISBN-10: 0316229296
発売日: 2015/8/4
適正年齢:PG15(性、バイオレンスあり)
難易度:上級+(英語そのものは難解ではないが、非常に入り込みにくい。ストーリーを把握するのに時間がかかる)
ジャンル:スペキュラティブ・フィクション/ファンタジー
キーワード:地球の破滅、人類の滅亡、Orogene(オロジェン)
文芸賞:2016年ヒューゴー賞受賞作

通常のSFやファンタジーには、はっきりした「主人公」と「敵」があり、クエストも明確だ。たとえば、騎士とドラゴンがいて、クエストはドラゴンを倒すことだ。
だが、N.K.JemisinのThe Fifth Seasonは、主人公も敵もクエストもなかなか見えてこない。
何ページも、何十ページも、そして何百ページも続くのは、終わりが見えない「抑圧」と「破壊」だ。
それもそのはず、これは、遠い未来の地球で、人類が滅亡に向う終末期(The Fifth Season)の話なのだ。

途中で本を放り出したくなるかもしれない読者のために、ネタバレ覚悟で内容を説明しようと思う。

遠い未来、人類は過去に達成した高度な技術や文化を深く地下に埋め込んだ地表で細々と生き延びている。
人類の敵は、怒れるFather Earth、つまり地球そのものだ。
Father Earthは、自分を粗末に扱い、傷つけてきた人類を、地震や火山活動で全滅させようとしている。
それを鎮めることができるのは、外見はふつうの人と変わらないミュータントのOrogene(オロジェンと発音する)だ。
だが、生まれつき異常な能力を持つOrogeneを、人々は異質なものとして恐れ、蔑み、殺そうとする。
いっぽうで、人は人類存続のためにOrogeneを利用する。

Orogeneとして生まれた子どもの宿命は2つしかない。
見つけた大人に殺されるか、Fulcrumという組織でトレーニングを受け、人類存続のために働くかのどちらかだ。
だが、たとえFulcrumでトレーニングを受けて熟練したOrogeneになっても、ふつうの人間のような自由もなければ、尊敬も得られない。Orogeneには一人のGuardianがつき、Guardianに背くと即座に死が待っている。
そして、人々を救っても、見下され、蔑称で呼ばれる。

この物語の主人公は「You」と呼ばれるOrogeneの女性Essunだ。
ある村で身元を隠して教師になり、地元の男と結婚し、2人の子どもを持った。だが、ある日帰宅して、幼い息子の死体を発見する。わが子がOrogeneだと知った夫が息子を殴り殺し、娘を連れて姿を消したのだった。
Essunは、娘を探す旅に出る。

著者はあと2人の女性を紹介する。ひとりは幼い少女Damayaで、もう一人は若い女性Syeniteだ。
読み進めていくうちに、EssunとDamaya,Syeniteの関係は明確になってくるので、ここでは語らない。

Jemisinの描く世界は、とことん暗い。
わが子がOrogeneとわかった親は簡単に子どもを殺すか見捨てるし、夫婦やパートナーの間にある愛はニヒルか屈折している。
人間への徹底的な不信感があるような気がしている。

Jemisinは、黒人女性として初めてのヒューゴー賞受賞者なのだが、彼女には、アメリカの歴史で虐げられてきた黒人の立場から見た「不条理の世界」が反映しているような気もする。

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