60年前に失跡した6歳の少女と家族の秘密が今明らかになる……。エドガー賞新人賞候補 『The Lost Girls』

著者:Heather Young (デビュー作家)
ハードカバー: 352ページ
出版社: William Morrow
ISBN-10: 0062456601
発売日: 2016/7/26
適正年齢:PG15+(性虐待のテーマあり)
難易度:上級(ネイティブの普通レベル)
ジャンル:ミステリ/心理スリラー
キーワード:家族の秘密、少女の失跡、親子関係、姉妹の関係、性虐待
賞:2017年エドガー賞 新人賞候補

1935年、ミネソタ州の湖畔にある避暑地で、6歳の少女が失跡した。人々の努力にもかかわらず、少女は二度と姿を現さなかった。地元で尊敬されていた少女の父親は、親から引き継いだ薬局を失い、自殺した。残された母と少女の姉二人は、夏が終わっても湖畔のコッテージに残り、死ぬまでそこで静かに暮らした。

少女が失跡してから60年後の冬、幼稚園と小学校5年生の娘を持つシングルマザーのJustineは、弁護士の知らせて遺産を受け取ったことを知る。一度しか会ったことのない大叔母のLucyが、湖畔の家と貯金を残してくれたと言う。

Lucyより先に亡くなった姉のLilithは、第一次大戦で婚約者を亡くし、未婚のままでJustineの母を産んだ。だが、Lucyは母ではなく、わざとJustineに遺産を残した。彼女が残したのはそれだけではない。家族の秘密もだった。

このミステリは、現代のJustineと、亡くなる寸前にLucyが綴った過去の告白の2つのストーリーで展開する。

ひとつは、1935年の夏に起こったEvans一家の悲劇だ。
年齢が近い長女のLilithと次女のLucyは、いつも親友のようだった。ところが、13歳になったLilithは、10歳のLucyを無視して年上のティーンたちと遊ぶようになる。まるで大人の女性のように高校生や隣人の若者に媚びを売るLilithに、Lucyは裏切られた思いをする。6歳のEmilyは、姉たち2人の仲間に入れてもらおうとするが、母は末っ子からいっときも目を離そうとしない。

薬局を経営する父は、かつてキリスト教牧師の道を目指した厳格なキリスト教徒だ。大人びた格好でボーイフレンドを作るLilithに純潔を守るよう厳しく言い渡す。Lucyは、そんな厳しい父を尊敬していたので、ひとりだけ釣りに誘われたときには幸福感でいっぱいだった。

だが、大好きなLilithも父も、末っ子だけを大事にしているような母も、じつは、Lucyが知らない秘密を隠していたのだった。その秘密が、夏の終わりの悲劇を引き起こした。

並行して語られるもう一つのストーリーの主人公は30代の女性Justine(ジャスティーン)だ。
Justineの母は、若い時に湖畔の家を出てから、いくつもの恋人を作り、放浪の暮らしをしてきた。自分の欲求を常に優先して娘を常に犠牲にする自己中心的な母のために、Justineは辛い子ども時代を送った。自分だけは絶対にそんな母にならないと誓った。子どもたちのために、ひとりのパートナーをキープし、一箇所に住み、安定した仕事を持つ母親になるのだと。しかし、無責任な子どもの父親には逃げられ、頼りがいある新しい恋人からは逃げ出したくなる。

恋人から逃げる衝動にかられたJustineは、子どもたちだけを連れて湖畔の家に向かった。都会暮らしで田舎の冬の厳しさを知らないJustineは、最初のうち自分の決断を後悔する。けれども、隠匿者のような隣家の老人の援助で、次第に母娘3人の暮らしを楽しむようになる。都市の学校で問題行動を起こしていた長女も、しだいに母に心を開くようになる。

ところが、自分が遺産をもらわなかったことを妬む母が現れ、ストーカー化した恋人までもが加わって、湖畔の家は緊張に包まれる。

そして、クリスマスの夜の事件で、2つのストーリーがひとつになる……。

デビュー作とは思えないほど凝ったミステリ/心理スリラーで、とても読みごたえがある。
Evans家の悲劇の元凶についても、宗教や心理の要素が深く絡んでいて、厚みがある。三姉妹のストーリーにはやるせなさを覚えずにはいられないが、希望を感じるラストに救われる。

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