著者:Alafair Burke
ペーパーバック: 304ページ
出版社: Harper Paperbacks
ISBN-10: 006239049X
発売日: 2016/1
適正年齢:PG15(高校生以上)
難易度:上級レベル(ネイティブの普通レベル。ミステリ好きで慣れている人であれば読みやすいはず)
ジャンル:ミステリ/心理スリラー
キーワード:昔の恋人、殺人事件、犯罪スリラー
賞:2017年エドガー賞候補
ニューヨーク市の犯罪弁護士Olivia Randallは、ロースクールを卒業してからキャリア一筋で生きてきた。
そのおかげで、女性でありながらも、犯罪弁護士として最も名前が知られるようになった。しかし、プライベートでは、既婚者との割り切った関係に虚しさを感じている。
そんなときに、昔の恋人の娘が現れて父親の弁護士になってほしいと言う。
同業者を紹介しようとするOliviaに少女は食い下がる。「私の父にあんな仕打ちをしたのだから、あなたには、それに報いる義務がある」と。
Oliviaは大学時代に知り合ったJack Harrisと婚約していたのだが、結婚寸前に別れた。それは、Olivia自身が認めているように、一方的に彼女のせいだった。
Jackは、婚約者を失っただけでなく、警察官だった兄も交通事故で失い、ショックで1年間精神科の施設に収容された。その後、ようやく立ち直り、結婚してベストセラー作家としてのキャリアを作り上げたのだが、3年前に妻のMollyが15歳の少年の乱射事件の犠牲者になった。この悲劇にもかかわらず、Jackは遺族のリーダーになり、心理的な問題を抱える息子に銃を与えた富豪の父を訴訟する。
ところが、その富豪が射殺され、Jackが逮捕された。検察はJackの有罪を確信しているが、聖人のように善人だった過去の恋人を知るOliviaは無罪を確信する。そして、「罪の意識が目をくらませている」という周囲の批判を無視して、弁護を引き受ける。
だが、調べが進むうちに、Oliviaが知らなかったJackのダークな一面が浮かび上がってくる。そして、あんなに確信していた無罪に自信が持てなくなる。同時に、過去20年抱き続けてきた罪悪感にも疑問を抱くようになる……。
あまりにも善人すぎる恋人に息苦しくなり、ひどい仕打ちをして別れた主人公の女性弁護士。メディアがヒーローとして扱ってきたシングルファーザーのダークな一面。父を溺愛する女子高生が隠す秘密……、など最後まで謎を楽しめる。しかし、そのいっぽうで、これらの人々の人物像にいまひとつ説得力がない。また、すっかり解決していない疑問も残っている。
どんでん返しが何度かあることから、『Gone Girl』と比較されているようだが、異なるタイプのミステリ。
面白いが、たぶんエドガー賞を受賞することはないと予想される2017年のエドガー賞候補作。