ジェイン・エアが鋼のように強いシリアルキラーのヒロインだったとしたら…?『Jane Steele』

著者:Lyndsay Faye (ほかに、The Gods of Gotham
ハードカバー: 432ページ
出版社: G.P. Putnam’s Sons
ISBN-10: 0399169490
発売日: 2016/3/22
適正年齢:PG15(高校生以上。露骨ではないが性的な話題あり)
難易度:上級(ネイティブの通常レベル)
ジャンル:ミステリ/スリラー、歴史小説、ゴシック・ロマンス
キーワード:ジェイン・エア、ヴィクトリア朝、シリアルキラー(連続殺人犯)
文学賞:2017年エドガー賞候補

Jane Eyre(ジェイン・エア)』は、子どもの頃から私が心惹かれた小説だ。最初はロマンチックな本ではなくてチャールズ・ディケンズ的な本だと思っていたのだが、高校生くらいになってゴシック・ロマンスとして好きになった。英語の本を読むようになってからも、何度か読み返している。美人ではなく、逆境の中で育ったヒロインの静かな芯の強さが魅力的だ。

本書のタイトルを見てすぐに、「もしかすると、Air(Eyreも同じ発音)ではなく、Steel(鋼)でできたジェイン・エアかな?」と思った。著者は、The Gods of GothamのLyndsay Fayeだから、興味深い。

予想どおり、Fayeのジェインはジェイン・エアを元にしているが、犠牲者のままで耐えてはいない強い女だった。

幼いジェイン・スティールは、ジェイン・エアのように叔母や従弟からひどい仕打ちにあい、恐ろしい寄宿学校にも送られてしまうのだが、鋼で出来たジェインは犠牲者になるのを拒む。ジェインの最初の殺人はただの事故だったが、そのうち、自分の周囲の犠牲者を守るために殺すようになる。

古典のほうを読んでいる人には馴染み深いストーリーラインだが、そこはFayeのこと、十分異なる設定がある。
ジェインが家庭教師として住み込んだソーンフィールド屋敷の主は、ローチェスターではなく、チャールズ・ソーンフィールドだ。私がジェイン・エアで最も納得できなかったのがローチェスターの人としての魅力なのだけれど、この点、インドでの過去を隠すチャールズは十分魅力的に設定されている。

ここで読者はドキドキすることだろう。ジェインの恋のゆくえではなく、シリアルキラーのジェインに出会ったチャールズの運命が心配になるからだ。

ラブストーリーの要素はあるものの、小説Jane Steeleの最大の魅力は、ジェインが過去の多くのヒロインたちに代わって抵抗するところだと思う。

20世紀前半までの小説では、ジェイン・エアのように芯が強くても、女性は一方的に耐えるしかなかった。だが、鋼で出来たジェインは、自分だけでなく、周りの女性が男性の犠牲になることを拒んで戦う。

『ジェイン・エア』が好きな女性読者の中でも本書に関しては意見が分かれているようだが、私は十分楽しんだ。

ジェインが将来シリアルキラーの職を引退することを祈る。

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