読むにつれて満足度が増してくる稀なファンタジー三部作 Shades of Magic 

著者:V. E. Schwab

A Gathering of Shadows

A Conjuring of Light

以前 Shades of Magic三部作の第一巻 A Darker Shades of Magicをご紹介したときには、百点満点の評価ではなかった。

完結編が出てから二巻と三巻を連続で読んだ後は、一巻もいい作品だったと思えてきた。
それどころか、会う人みんなに薦めるほど好きな三部作になった。

第一巻を読んでいない人に二巻と三巻のプロットを書くとネタバレになってしまうので、ここでは、ネタバレにならない範囲で魅力を説明しよう。

まず、主要人物のキャラクターがユニークだ。

主要人物は、パラレルに存在するロンドンを行き来できる魔力を持った青年魔術師Kellと、彼から重要なモノを盗んだ女泥棒のDelilahである。通常のファンタジーでは、ヒーローやヒロインは世界を救うために命を投げ出すほどの正義感があるのだが、彼らにはそれはない。

Kellは、兄弟のように育てられた王子のRhyに対しては忠誠心が厚いが、一般的な倫理観はあまりない。とはいえ、物語が進むうちに、意外な思いやりや倫理観を垣間見せる。世界で最もパワフルな魔術師なのに、束縛された人生を送り、静かに自己犠牲を繰り返すKellを、読者は愛さずにはいられないだろう。

Delilahは、Kellよりさらに珍しいヒロインだ。
自分以外の人間は、「潜在的に敵」とみなし、誰も信用せず、利用することを考える。「食うか食われるか」のグレー・ロンドンで、生きのびることだけを目標にしてきたDelilahにとっては、当然といえる価値観だ。一巻でKellに出会うが、そう簡単にこの人間関係に飛びつくつもりはない。さっさと背中を見せて冒険の旅に出るところもいい。
そんな傍若無人のDelilahが、二巻と三巻でわずかに変わってくるところは、リアリスティックで好感が抱ける。

役立たずの遊び人王子のRhy, 二巻で登場する「海賊(私掠船,privateer)」の船長Alucard Emery、悪役と言える魔術師のHollandも、人間的な深みを持っていることがわかってくる。

二巻では、ハリー・ポッターやハンガー・ゲームの一部を連想させるような魔術の大会があるが、大会そのものではなく、その背後で起こっている暗い動きが中心になる。

全体的にダークだが、最後まで読んで後悔しない三部作である。

1 Comment

  1. レビューをありがとうございます!やっと読む気になりました。最終巻の評価がかなり高かったのでその満足感を味わいたくて試しかけていましたが、オーディオブックの声が個人的に残念で・・・
    渡辺さんが「声」や「聴き心地の良さ」でお勧めするオーディオブックはありますでしょうか?

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