サイコパスの妹を持つ少年の悩みを描くYA心理サスペンス『My Sister Rosa』

著者:Justine Larbalestier
ペーパーバック
出版社: Soho Teen; Reprint版
ISBN-10: 1616958170
発売日: 2017/9/12
適正年齢:PG15(性的なテーマがあるので、高校生以上向け)
難易度:上級(普通の大人向けの文芸小説よりもわかりやすい文体だが、中級の読解力では理解しにくいだろう)
ジャンル:YA(ヤングアダルト)/心理サスペンス(サイコスリラー)
キーワード:psycho-thriller, サイコスリラー、サイコパス、反社会性人格障害(反社会性パーソナリティ障害)、人種、初恋、青春小説、ニューヨーク、ボクシング
賞:2017年 エドガー賞(YA部門)

17歳の少年Che Taylorの両親はユダヤ系のオーストラリア人だが、社会主義を憧憬する無神論者で、Cheという名前はチェ・ゲバラから来ている。両親は、リベラルなインテリのステレオタイプなところがあり、子どもには自分たちを「お父さん、お母さん」ではなくファーストネームで呼ばせている。だが、子どもの人格を重んじているようで、実際は無関心だ。

Cheの最大の悩みは10歳の妹Rosaだ。
金髪で青い目のRosaは、まるでお人形のように可愛い。数学の天才で、チェスの才能もあり、会った人は誰でもRosaの虜になる。だが、Rosaにはempathy(他者への共感)がない。虫や動物を殺し、人の感情や行動を操るのを楽しむ。Cheは、妹を心から愛しているが、彼女が危険だということも知っている。
両親はRosaの問題に気付いているくせに、「そのうちに良くなる」と、Cheの不安を否定する。

Cheの家族は、父の仕事で世界を転々としてきた。今度は、ニューヨークのマンハッタンだ。出資者は母の親友夫婦で、飛行機代も豪華なアパートメントも、この夫婦が出している。

長期的な友情を維持できず孤独なCheにとって、ボクシングの練習だけが心の支えだ。けれども、「暴力反対」の母からスパーリング(模擬戦)を禁じられている。マンハッタンでみつけたジムで、Cheはボクシングをする黒人の少女Sojournerに恋をする。敬虔なキリスト教徒のSojournerに「私にとって神を信じることはすごく重要なことなので、信じない人とはつきあえない」と言い渡され、無神論者として育てられたCheは教会にも一緒に行くようになる。

だが、Rosaがそれを放っておくはずはない。彼女はCheにとって大切な関係にも侵入してくる。

また、Rosaは出資者の双子の片方をターゲットにする。ひとりを「親友」にして操るいっぽうで、もっと怖いことを企んでいるようだ。

Cheは、大切な人々を妹から守るためにどうすればいいのか悩む。

本作品は、2017年エドガー賞のヤングアダルト部門で最終候補になった作品だ。
ヤングアダルトにしては重いテーマであり、複雑で、サブプロットも面白い。主人公が17歳の少年なのでアメリカではYA部門になっているのだろうが、ふつうに「長篇部門」にするべき作品だと思う。

サイコパスについての解説もしっかりしていて、薄気味悪さに現実性がある。そして、マンハッタンの多様性社会を反映する登場人物たちもリアリスティックだ。エンディングには不満もあるのだが、そこも「リアリスティック」という点では評価するべきかもしれない。

余談だが、CheとSojournerのラブストーリーを読んでいて、エド・シーランのShape of Youのビデオを連想した(後半の相撲のシーンを除く)。

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