自信がない大人のための童話的小説 The Nothing Girl

作者:Jodi Taylor
ペーパーバック: 340ページ
出版社: Accent Press
ISBN-10: 1783753994
発売日: 2014/5/22
適正年齢:PG15
難易度:中級+〜上級
ジャンル:現代小説/chick lit/ファンタジー/ミステリ
キーワード:ひきこもり、吃音症(どもり)、低い自己肯定感、自殺未遂、イマジナリーフレンド、ラブストーリー、農場、動物

イギリスの田舎町に住むジェニーは、幼いときに両親が亡くなり、叔母の家に引き取られた。
けれども、家族がわりの叔父や叔母、従兄姉たちは、重症の吃音症(どもり)があるジェニーを、外に出すのが恥ずかしい欠陥人間として扱う。周囲から「役立たず(Nothing Girl)」として扱われて、生きるのが辛くなったジェニーは、13歳のときに自殺を決意する。

ところが、準備万端で自殺に挑んだジェニーの前に、黄金の馬トーマスが現れた。
ジェニーにしか見えないトーマスは、精神的に崩れようとするたびに耳元で賢いアドバイスをしてくれる親友になり、叔父の家でひきこもりになったジェニーを15年支えてきた。

何も起こらないけれども安全だったジェニーの引きこもり生活が、28歳のときに急変した。
結婚して農場で暮らすことになったのだ。
夫は、幼なじみのラッセル。一時はロンドンで注目されていた若手画家だったが、ミューズに見捨てられてからスランプに陥り、金繰りに困っている。親から引き継いだボロボロの農場を修復するために、ジェニーが両親から受け継いだ遺産を使いたいという。その引き換えとしてラッセルがジェニーに提供したのは、彼女を過剰に操る叔父と叔母からの独立だ。

ラッセルはチャーミングでたまには思いやりもあるのだが、衝動的であてにならない。見捨てられた動物を見ると放っておけずに拾ってくる。おかげで、農場には反対方向に走る競走馬、か弱そうで頑固なロバ、醜くて凶暴な猫、そして、アル中の家政婦と家出少年が集まっている。

無責任な夫にかわって役立たず集団を飼いならしていくジェニーだが、問題はラッセルの元恋人だ。子どもの頃からジェニーをいじめてきた従姉のフランチェスカは、自分が捨てた恋人のラッセルをすっかり解放してやるつもりはない。ラッセルも、フランチェスカを取り戻せば絵のスランプから抜け出せると信じているようだ。

おまけに、どうやらジェニーの命を狙っている者がいるようだ。事故の数々が偶然ではないと気付いたジェニーは、誰を信じていいのかわからなくなる。

スコットランドのインディ出版社が刊行したこの小説は、大手出版社が刊行する作品とは少し異なる。
この作品は女性小説、ラブストーリー、ファンタジー、ミステリーがごっちゃになっていて、ジャンルを特定できない。大手出版社だと、「これでは売れないから書き直しなさい」と言っただろう。ユーモアのセンスもquirky(風変わり)で、これも「大衆向けではない」と批判されそうだ。後半のドタバタ劇は唐突だし、ミステリの必要があるかどうかも疑問だ。

しかし、イギリスとアメリカの読者の評価はとても高い。
それは、読んでいて楽しく、心温まる作品だからだろう。
水漏れがするフログモートン農場で、欠陥だらけの人間と動物と一緒にお茶を飲みたくなる。いざとなると姿を消すラッセルも含めて。

「役立たず」のひきこもりが28歳で家を出て人生を勇敢に築いていく物語は、出来過ぎと言えるかもしれないが、「大人の童話」としては、とてもよく出来ていると思う。

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