禁酒法時代のニューヨークで実際に起こった失跡事件を題材にした歴史ミステリ The Wife, the Maid, and the Mistress

著者:Ariel Lawhon
ペーパーバック: 320ページ
出版社: Anchor
ISBN-10: 0345805968
発売日: 2014/5
適正年齢:PG 15
難易度:上級+(登場人物が多く、時間があちこちに飛ぶので混乱するかもしれない)
ジャンル:ミステリ/スリラー
キーワード:失跡事件、禁酒法時代、Judge Joseph Crater、ジョゼフ・クレイター判事、Cotton Club、コットンクラブ、Owney Madden、オウニー・マドゥン

禁酒法時代にニューヨーク市で実際に起こった失跡事件を元にしたミステリ。

1930年の夏、ニューヨーク州最高裁判事のジョゼフ・クレイターがこつ然と姿を消した。彼は二度と姿を現さず、死体も発見されなかった。この謎の失跡事件に国民の好奇心は集中したが、いまだに真相はわかっていない。

著者のAriel Lawhonは、実存の人物に架空の人物を加え、読みごたえあるミステリを描き上げた。

主要人物は、タイトルにもあるように、クレイターの妻のステラ、夫婦の自宅でパートタイムのメイドをしていたマリア、そして、判事の愛人リッツィ、という3人の女性だ。それぞれの視線から、事件前後のストーリーが語られ、最後に全貌が見えてくる。

このミステリは題材そのものが興味深い。

私の年代で禁酒法時代にハーレムで繁栄した高級ナイトクラブ「コットンクラブ」の名前を知らない人はいないだろう。デューク・エリントンやルイ・アームストロングなど黒人ジャズミュージシャンを有名にした場所でもある。しかし、客が「ホワイトオンリー(白人のみ)」だったというのを知る日本人はあまりいないかもしれない。
それと、経営者が悪名高いアイルランド系ギャングのOwney Madden(オウニー・マドゥン)だったということも。

本書でも、コットンクラブとオウニー・マドゥンが登場する。というか、重要な役割を果たしている。
クレイター判事は汚職の噂もあり、ギャングとの関係も深かったことが疑われていた。

このミステリでは、3人の女性が、それぞれ異なる形でクレイター判事とオウニーと繋がっている。それをときほぐしていく間に真相が見えてくるという構造だ。

時代考察やディテールがとてもおもしろいのだが、シーン、時間、視点があちこちに飛ぶのが難だ。
そのために、リズムを失っている。

とはいえ、実際の歴史を元にしたフィクションとして、とてもおもしろかった。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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