現代アメリカを不安定にしている社会環境が理解できる重要な本 White Working Class

著者:Joan C. Williams
ハードカバー: 112ページ
出版社: Harvard Business School Press
ISBN-10: 1633693783
発売日: 2017/5/16
適正年齢:PG15(どの年齢で読んでも良いが、理解できるようになるのは高校生以上であろう)
難易度:中級+(文章構築はシンプル。問題は単語のみ。日本で英語を学んだ人には小説より読みやすいはず)
ジャンル:ノンフィクション/政治、社会学
キーワード:アメリカの白人中産階級、ホワイトワーキングクラス、現代アメリカの政治的状況

私は2016年大統領選を現地で取材してルポや本を書いた。
そして、大統領選中に、トランプを強く支えている人々を理解する本として『ヒルビリー・エレジー』をニューズウィークの書評で紹介し、日本語版の解説も書かせていただいた。

本書『ホワイト・ワーキング・クラス』は、『ヒルビリー・エレジー』と似たテーマを扱っているが、内容は異なる。

ここで語られているのは、よく話題になるオピオイド依存症に蝕まれた田舎町の白人ではない。どちらかというと、一世代前まで「中流階級」としてアメリカのプライドを代表してきた白人たちだ。

彼らは、移民だけでなく、都市部の白人エリートに対しても嫌悪感や疎外感を抱いている。
その感情は論理的な思考や「理屈」を否定する。
だから、彼らは「都市部エリート」の側についているように見える民主党に嫌悪感を覚え、批判するのだ。

労働者階級の最大の理解者だったはずのサンダース候補ですら、この『ホワイト・ワーキング・クラス』を読み違えていた。
彼らが求めているのは、サンダースが押した「最低時給15ドル」や「大学の無料化」ではなかったのだ。
アメリカの中流階級であるホワイト・ワーキング・クラスは、自分たちこそがアメリカの道徳観や価値観を担ってきたと自負している。彼らが求めていたのは、そんな自分たちへのリスペクトなのだ。
それを唯一理解していたのが、トランプだった。

著者は裕福な過程で育った大学教授で、ホワイト・ワーキング・クラスが敵視する階級の女性だ。だが、それを自覚したうえでリベラルエリートがこれまで目をそらしてきた現実や避けてきた問題、そして「上から目線」で誤解してきたことを鋭く指摘している。

日本人読者にとっては、目から鱗が落ちるような事実がしっかりと書かれている。そういう意味で、『ヒルビリー・エレジー』とあわせて、ぜひ読んでいただきたい本だ。

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