アキレウスとパトロクロスのラブストーリーになった『イーリアス』の改作 The Song of Achilles

作者:Madeline Miller
ペーパーバック: 416ページ
出版社: Ecco
ISBN-10: 0062060627
発売日: 2012/8/28
適正年齢:PG15
難易度:上級(ネイティブの普通レベル)
ジャンル:歴史小説(ギリシャ神話の解釈小説)
テーマ/キーワード:ギリシャ神話、トロイア戦争、イーリアス(ホメーロスの抒情詩)、アキレス(アキレウス)、パトロクロス、男性同士の愛、Greek Epic Poem, Trojan War, Iliad, Achilles, Patroclus

今年発売されて話題になっているMadeline MillerのCirceを購入したとき、The Song Of Achillesを読むつもりですっかり忘れていたことを思い出した。引き続き、娘から「あの本読んだ? 面白かったよ」と言われ、刊行から6年たってようやく手にとった。読んで思ったのは、「なぜ6年も読まなかったのか?」という後悔だった。

それほどThe Song Of Achillesは面白かった。

私は古典のIliad(イーリアス)の大筋は知っているが、原作は英訳版も邦訳版も読んでいない。トライしたことはあるが途中放棄してしまった。だから、原作との比較は、大学入学前にすべて読んだ娘に頼るしかないのだが、彼女によると、「イーリアス、アエネーイス、オデュッセイアなどすべてを読んでようやく全体像がつかめる本」ということだ。けれども、それらを読んだ彼女にとっては、「こういう本を待っていました!」というワクワクする小説だったようだ。

この小説は、トロイア戦争の全体像を読むものではなく、パトロクロスの視点で、彼とアキレウスの関係を描く、壮大なロマンス小説なのだ。

作者のMillerは、ブラウン大学で古典を専攻し、10年以上、ギリシャ語、ラテン語、シェークスピアを教えてきた古典のプロである。彼女が10年かけて書いたこの作品からは、ギリシャ神話を知り尽くした者の対象への深い愛が感じられる。

神話上のアキレウスのイメージは怒りにかられやすくて殺しが得意な半神だが、Millerが作り上げたパトロクロスが見つめるアキレウスはまったく違う。繊細で思いやりがある部分と、女神の母テティスに心理操作される部分を持つ複雑な人物として描いている。

BL好きの人たちはギリシャ神話の二次創作的な感覚で読むかもしれない。

どう読むにせよ、「ギリシャ神話ってこんなに面白かったのか!」と思わせてくれる。そして、おおいに泣かせてくれる。

次のCirce(キルケ)がとても楽しみだ。

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