死んだ少女の姿は幻影か幽霊か? オカルト的雰囲気たっぷりの心理スリラー The Last Time I Lied

作者:Riley Sager
ハードカバー: 384ページ
出版社: Dutton
ISBN-13: 978-1524743079
発売日: 2018/7/3
適正年齢:PG15(性的シーンあり)
難易度:中級+(状況設定で理解しにくい可能性はあるが、文章は非常にシンプル)
ジャンル:心理スリラー
キーワード/テーマ:サマーキャンプ、少女失跡の謎、幻影、幽霊、信頼できない語り手、過去の事件

15年前の夏、思春期を迎えたばかりの少女エマ(Emma)は、アルコール依存症で気まぐれな母の思いつきで、有名人や裕福な家庭の娘が集まることで知られるサマーキャンプの「キャンプ・ナイチンゲール」に初めて参加した。

定員4人のキャビンには、すでにビビアン(Vivian)、ナタリー(Natalie)、アリソン(Allison)という年上の少女らがいた。3人は同じ私立高校での知り合いらしい。リーダー格のビビアンは気まぐれで、冷たいときもあるが、エマはビビアンを姉のように慕う。

ある朝、ビビアン、ナタリー、アリソンの3人がキャンプ場からこつ然と姿を消し、二度と戻ってこなかった。

罪悪感を持つエマは、数年間精神的に不安定になったが、成人した今はニューヨークの新進気鋭のアーティストとして注目を集めるようになっていた。エマの巨大なアートには、他の人には見えないが、失跡した3人の少女が隠されている。

エマの作品を購入したひとりは、なんと「キャンプ・ナイチンゲール」のオーナーである富豪のフランチェスカ・ハリス=ホワイトだった。フランチェスカは、少女失跡後のスキャンダルで閉鎖した「キャンプ・ナイチンゲール」を復活させるつもりだという。そして、アート教師としてエマにも参加してほしいというのだ。

スランプに陥っていたエマは、15年前の事件を解決する可能性にも惹かれて引き受ける。だが、彼女を待ち受けていたのは、事件の犯人としての疑いの視線と孤立だった。

キャビンで同室させられた少女たちと仲良くなったエマだが、ビビアンの亡霊のような幻影をあちこちに見るようになり、自分の精神状態も疑うようになる。そして、ふたたび少女たちが姿を消した……。

「信頼できない語り手」というのは、最近は使われすぎているほどよく使われるミステリの手法である。だが、このLast Time I Liedでは、主人公は「自分が自分を信頼していない語り手」なのだ。だから、読む人は何を信じていいかわからなくなる。

たぶんそれが功を奏して、アメリカの読者の評価は高い。元精神科病院があったというキャンプ場や、こつ然と姿を消した少女たち、そして、その亡霊を見る主人公…….とオカルトな雰囲気たっぷりだ。

最後の最後に「おどろきの展開」があるのも読者の評価を高くしている。

しかし、ミステリ好きの視点では、驚かせるためとはわかっていても「これはありえないよな」という展開が多すぎて高い評価はできない。

とはいえ、ページーターナーという点では、最後の最後まで楽しめることはまちがいない2018年の注目作品である。

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