ゴシックスリラー好きにお薦めの新作 The Death of Mrs. Westaway

作者:Ruth Ware
ハードカバー: 384ページ
出版社: Gallery/Scout Press
ISBN-13: 978-1501156212
発売日: 2018/5/29
適正年齢:PG15
難易度:上級
ジャンル:ゴシックスリラー/サスペンス
キーワード/テーマ:家族の秘密、遺産、裏切り、タロットカード、英国ミステリ

シングルマザーに育てられた少女ハリエット(Hal、ハル)は、母が事故死した後に経済難に陥り、学校をやめてタロットカード占いで生計を立ててきた。だが、高金利の金貸しから借りた僅かな借金が雪だるま式に膨らみ、脅しをかけられるようになっていた。

そんなとき、ハルは見知らぬ弁護士からの手紙を受け取る。亡くなったウエスタウェイ夫人(Mrs. Westaway)が孫のハルにある遺産を残したというのだ。母の両親はすでに亡くなっているので、何かの間違いだということは明らかだ。他人になりすましたくないハルだったが、借金の取り立て人から身の安全を脅かされるようになっていたために、わずかな遺産を期待してウエスタウェイ夫人の葬式に参列することにした。

ハルを待ち受けていたのは、ウエスタウェイ夫人の豪華な屋敷と、そこに集まった冷たい使用人と家族たちだった。彼らはハルが偽物ではないかと疑うが、彼らがそれぞれ抱えている秘密が明らかになるにつれ、ハルが知らなかった母の真実が浮かび上がってくる。

だが、それは多くの人にとって危険な真実だった……。

The Death of Mrs. Westawayは、2018年の作品でありながら、ダフニ・デュ・モーリエ (Dame Daphne du Maurier)のRebeccaを連想させるゴシックな雰囲気たっぷりである。

子供たちから憎まれていたウエスタウェイ夫人、彼女に最後まで尽くした使用人の老女、それぞれに愛と憎しみを抱えているような息子たち、姿を消した娘……など役者も揃っている。

さらにオカルトな雰囲気をかきたてているのが、ハルが母から受け継いだタロットカードの占いと、magpie(マグパイ、カササギ)である。

マグパイはイギリスではよく登場する鳥で、うるさいことでも知られる。このゴシックスリラーのテーマになっているのが、次の童謡だ。

One for sorrow,
Two for joy,
Three for a girl,
Four for a boy,
Five for silver,
Six for gold,
Seven for a secret,
Never to be told.

モーリエやルース・レンデルのファンにとってはノスタルジックさも感じて楽しめるゴシックスリラーである。

1 thought on “ゴシックスリラー好きにお薦めの新作 The Death of Mrs. Westaway”

  1. 予想外の展開やどんでん返しはないけれど、不気味で怪しい雰囲気たっぷりのスリラーでした。カササギは今一歩印象に残らなかったのですが、作品中のタロットカード占いの使い方は巧みだと思いました。この小説は(渡辺さんがこのあいだおっしゃっていた)最後にご褒美があるタイプのミステリーですね。

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