キュートだけれどインパクトに欠ける 2018年ニューベリー賞受賞作 Hello Universe

作者:Erin Entrada Kelly
ペーパーバック: 320ページ
出版社: Greenwillow Books
ISBN-10: 006287750X
発売日: 2017/3/14
適正年齢:小学校高学年から中学生
難易度:中級レベル
ジャンル:児童書(9−12)
テーマ/キーワード:多様性、イジメ、友情
賞:2018年ニューベリー賞受賞作

小学校を卒業したばかりの少年Virgil Salinasは中学が始まる前から憂鬱でならない。
他の子たちがどんどん成長しているのに、フィリピン系のVirgilは小柄なままだ。そのうえ、両親から「Turtle(カメ)」というニックネームで呼ばれるほどシャイで引っ込み思案なのだ。
Virgilは密かに同級生の少女Valenciaに恋をしているのだが、ValenciaのほうはVirgilの存在すら意識していない。

聴覚障害があるValenciaは、仲が良い友だちができずに孤独でいる。けれども、孤独だということを自分自身でも認めたくない。

他の子と少し異なるVirgilとValenciaは、近所の体格が良い白人男子のChetからイジメの対象になっている。

自称「霊能力者」の中学生Kaori Tanakaはビジネスを広めたいと思っているが、今のところクライアントは近所のVirgilだけだ。そのVirgilが予約の時間に姿を現さなかったことで、彼に何かが起こったとKaoriは察知する。Kaoriは、妹のGenとValenciaと一緒に近所の森でVirgilを探す……。

人種や文化背景だけでなく障害を含めた多様性がある子供たちが、手をつないで助け合うストーリーは、今のアメリカにはぴったりの児童書だろう。だが、いじめっ子とその父親があまりにもステレオタイプなのはどうかと思った。

また、子供が助け合うストーリーはいいが、この本が与えるいじめっ子に対する解決策は現実では役に立たない。それは、本当にいじめられたことのある子ならよく知っているだろう。

この本を読む前と後で、子供の人生は何か変わるだろうか?
私はさほど変わらないと思う。

2018年のニューベリー賞の受賞作なので期待したのだが、期待したより表層的な作品だったのが残念だった。

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