読み応えある世界観が魅力の隠れたファンタジーの名作 The Queen of Renthia シリーズ The Queen of Blood

著者:Sarah Beth Durst (Iceの作者)
Queens of Renthia (Book 1)の情報
ハードカバー: 368 pages
出版社: Harper Voyager
ISBN-10: 0062413341
発売日:2016年9月20日
適正年齢:PG15+(性的コンテンツあり)
難易度:上級(センテンスは短く、文法としてはシンプルだが、世界観を理解するためには英語の読書に慣れている必要がある)
ジャンル:ファンタジー
テーマ/キーワード:妖精、魔術、クイーン、戦い、裏切り、国の指導者としての責任
賞:2017 ALA Alex Award

Renthiaの世界では、人を取り囲むすべての自然に精霊が宿っている。

子供たちは縄跳びしながらこう歌う。

火を信用するな。焼かれるぞ。
氷を信用するな。凍らされるぞ。
水を信用するな。溺れさせられるぞ。
空気を信用するな。窒息させられるぞ。
地面を信用するな。埋められるぞ。
木を信用するな。切り裂かれ、
ズタズタにされ、殺されるぞ。

精霊たちは、常に2つの欲求にかられている。それは、「育つこと」と「人を殺すこと」だ。

その精霊たちの欲求を抑え、コントロールできるだけの強力な魔力を持つのは女王だけだ。女王になる潜在的な才能を持って生まれた少女は、魔術の学校で「女王の後継者」になるための勉強とトレーニングを積む。そして、卒業を控えたときに「チャンピオン」と呼ばれるトレーナーに弟子入りして女王の後継者に選ばれるためのテストを受ける。通常、女王は死ぬまで任務を果たし、女王が死んだときには複数の後継者の中から精霊が女王を選ぶ。

Daleinaが6歳のとき、大木の上に存在する村が木の精霊に襲われた。Daleinaはそのとき初めて自分に魔力が備わっていることを知る。家族はなんとか生き延びたが、そのほかの村人は無残に殺されてしまう。村人を救えなかったことに罪悪感を覚えるDaleinaは、二度とその罪悪感を覚えずにすむために魔術を学ぶ学校に入学した。

Daleinaは努力家だったが、生まれつきの才能には欠けていた。教師からも「女王の後継者になる可能性はない」と言われ、同級生たちが次々とチャンピオンから選ばれるなか、ひとりだけ将来の道を見極めることができずにいた。

そんななか、現在の女王からの寵愛と地位を失ったチャンピオンのVenがDaleinaの学校に現れる。現在のRenthiaの状況に危機感を抱くVenは、生まれつきのパワーや競争心よりも「この国を守りたい」という真摯さやリーダーシップを持つDaleninaを選ぶ。

まだVenのトレーニングが不十分なときに、女王が後継者を選ぶ集まりのために招集をかけた。

しかし、そこには女王の企みが待ち受けていた……。

Sarah Beth DurstのQueen of Renthia三部作の第一部『The Queen of Blood』は、2016年にALA(全米図書協会)のAlex賞(大人向けに書かれた作品の中でティーンにお薦めできる本の賞)を受賞したファンタジーだ。
だが、なんとなくベストセラーリストに乗りそこねてしまったような感がある。

最近この三部作に気づいて読んだのだが、「なぜ今まで読まなかったのか!」と残念に思った。それほど面白かったのだ。

特に、world buildingが優れている。

Renthiaの精霊には人を殺したいという欲求がある。よくあるファンタジーであれば、魔力を持つヒーローかヒロインが精霊と戦うだけのものになりがちだ。だが、Renthiaでは、精霊を殺してしまうこともできないのだ。なぜなら、精霊の「育ちたい」という欲求が実りをもたらすのであり、精霊を殺したら自然が死に、人間も死に絶えてしまうのだ。だから、女王は精霊を殺さずにコントロールしなければならない。精霊にあなどられてると殺されるが、パワーを使いすぎると憎まれる。女王の座を引退することは可能だが、引退してパワーを失ったとたん、精霊は自分たちを抑圧してきた元女王を殺す。だから女王は休まるときがない。そして、パワーハングリーにもなる。

Queen of Bloodは、この辺りの微妙なバランスを描いているところが実にうまい。だが、恋人たちの描き方があまりにも下手くそなのだ。プロットにとって必要な関係なのだと思うけれど、ないほうがましだとしか思えない。このためにYAファンタジーのファンの間で売れなかったかもしれない。

タイトルにbloodがあるが、本当にbloodyな内容である。それでも、あまりショックを受けないのは、たぶんそれだけ登場人物たちに感情移入していなかったからだろう。つまり、この三部作は、キャラではなくて世界観で読む類のファンタジーなのだ。二部も三部も難問が次々と出てきて飽きさせない。

そういうファンタジーを探している人には、とてもお薦めの掘り出し物ファンタジーである。

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