子供の世界のリアルな困難を扱いながらも人間を信じる希望を与える児童書 The Truth as Told by Mason Buttle

作者:Leslie Connor
ハードカバー: 336ページ
出版社: Katherine Tegen Books
ISBN-10: 0062491431
発売日: 2018/1/23
適正年齢:PG8(小学校中学年から中学生、8歳以上)
難易度:中級
ジャンル:児童書
キーワード:学校、いじめ、友情、家族の愛、学習障害(ディスレクシア)、公立学校でのサポート
賞:全米図書賞ファイナリスト、Publishers Weekly Books Books of 2018、Amazon Best Books of 2018、ニューヨーク公共図書館とシカゴ公共図書館の2018ベストブック

多くの大人は忘れているが、子供の世界には楽しみだけでなく、悩みや苦しみ、悲しみもたっぷりある。
The Truth as Told by Mason Buttleの主人公である12歳のMason Buttle(メイソン・バトル)の日常世界もそうだ。

メイソンが一緒に暮らしている祖母と叔父は母の死後に生きる気力を失い、叔父はバトル家が代々経営してきたリンゴ農園の土地を切り売りして暮らしている。おまけに、メイソンの部屋は叔父が拾ってきた無職の若い女性シェイリーンに横取りされてしまった。テレビショッピング中毒のシェイリーンは毎日叔父のクレジットカードで買い物をするだけで家のことを手伝おうともせず、メイソンに悪口雑言を浴びせかける。

学校で一番背が高く、学習障害(文字の読み書きが困難なディスレクシア)があって多汗症のメイソンは、同級生の少年たちから執拗にいじめられている。そのリーダー各のマット・ドリンカーは、母親と飼い犬が心優しいメイソンのことを好きなのが気に入らないようだ。

メイソンには大親友のベニーがいたが、バトルのリンゴ農園での事故で15ヶ月前に亡くなった。
ベニーが死ぬ前に一緒にいたのがメイソンだったためか、地元の刑事ベアードはメイソンに「もっと語ることがあるはずだ」とノートまで渡してしつこく欲求し続ける。ディスレクシアがあるからノートに書けないことを含め、ベアード刑事はメイソンの言うことに耳を傾けず、自分が求めていることだけを語らせようとする。だが、純粋なメイソンはベアードの求めていることや、ベニーの2人のお父さんが自分を避けている理由がよくわからない。

学校で何らかの障害や問題がある子供が自由に訪問できるソーシャルワーカーの部屋で、メイソンは新しい親友を作った。身体は小さいが知性では誰にも負けないカルバンとメイソンは、バトル家の農園にある古い地下貯蔵庫を「ラスコー洞窟」を模倣した隠れ家に作り変えた。
ところが、いじめっ子たちに追われた午後にカルバンが姿を消し、ベアード刑事はふたたびメイソンに疑いをかけた……。

子供が「ふつう」と少し異なるためにいじめにあうのは、世界共通の現象だ。この本でメイソンがあういじめは、度を超えているように感じるかもしれないが、現実ではふつうによく起こっていることだろう。それが見えないとしたら、大人が気づいていないだけだ。

だが、この本では、ちゃんと気づいてくれる大人がいる。「ふつう」のカテゴリに入らなくても、ちゃんと良いところを見つけて評価してくれる大人の姿を見せてくれるのだ。子供の読者は、無意識のうちにそこに希望を感じることだろう。

メイソンとカルバンがラスコー洞窟を再現しようとするところは、大人の読者には退屈に感じるかもしれないが、子供の読者にはきっと胸躍る部分だと思う。私は、子供のころに『トム・ソーヤーの冒険』を読んだときの胸躍る楽しさを思い出した。

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