著者:Delia Owens
ハードカバー: 384ページ
出版社: G.P. Putnam’s Sons
ISBN-10: 0735219095
ISBN-13: 978-0735219090
発売日:2018年8月14日
適正年齢:PG15
難易度:上級
ジャンル:歴史小説/文芸小説
キーワード/テーマ:ノースカロライナ、salt marsh(塩性湿地、塩沼)、殺人ミステリ、coming of age,自然愛護、ラブストーリー
1969年、ノースカロライナ州沿岸の小さな町Barkley Coveの塩性沼地(ソルト・マーシュ、salt marsh)で少年たちが死体を見つけた。それは、裕福な家庭で育った町のプレイボーイとして有名なチェイス・アンドリューズ(Chase Andrews)だった。犯人として疑われたのは、町の住民たちが「Marsh Girl」とニックネームで呼ぶ若い女性カヤ(Kya)だ。

カヤは、両親や年上の兄や姉たちと一緒にマーシュの中にある小さな小屋で暮らしていた。だが、父の暴力に耐えられなくなった母が家出をした後、姉や兄たちも次々と家を去っていった。父と二人きりになった幼いカヤは父の機嫌を取りつつ生活するが、その父もいつしか家に戻なくなってしまった。飢えていたカヤは給食を食べられるという約束につられて1日だけ学校に行くが、笑い者になって学校に行くのをやめてしまう。そして、保護されてマーシュから連れされれるのを恐れ、大人から隠れて暮らす。
マーシュの中で孤独に暮らす少女を、町の人々は「マーシュ・ガール(塩沼の女の子)」と呼んで野生の動物のようにみなし、見下していた。そして、同年代の子どもたちは残酷な好奇心で追いかける。
そんななかで、カヤの兄の釣り友達だったテイト(Tate)だけがカヤに親切にし、辛抱強く読み書きを教えた。自然科学とマーシュへの情熱を共有するカヤとテイトは友情から淡い愛情を育てていくが、4つ年上のテイトは大学に行ったきりカヤの元には戻らなくなる。これまで愛して信頼した者のすべてから置き去りにされたカヤは、二度と人を信じないと決意する。
幼い頃からカヤが集めてきたソルト・マーシュの生物のサンプルや彼女が描いたイラストは、これまでどの学者も達成したことがないものだった。カヤのサンプルは専門書として出版されて評価されるが、それを知らない町民たちはカヤのことをいまだに無知で奇妙な生き物のように扱っている。
マーシュで見かけたカヤの野性的な美貌に取り憑かれたチェイスは、外の世界と接触がないカヤの無知と孤独を利用して接近する……。
『Where the Crawdads Sing』の著者であるDelia Owensは、野生生物が専門の科学者であり、ノンフィクション作家でもある。小説はこの本が初めてだが、処女小説とは思えないほど人物造形やプロットがよくできている。殺人ミステリやロマンス小説的要素があるので、文芸小説ファンには居心地が悪いところがあるかもしれないが、マーシュの美しさや少女の孤独さがしみじみと伝わってくる良い作品だ。
そう思った人が多いのだろう。この小説は、発売当時から何ヶ月もたった今でもハードカバーの売れ行きで全米1位を保っている。リース・ウィザースプーンのブッククラブの選書であり、ウィザースプーンがFOX2000で映画化することが決まっている。そこで描かれるマーシュが楽しみだ。
ずっと読みたかった本ですが、映画化されたことも手伝ってか大人気で、最近ようやく図書館の棚にあるのを目にして大急ぎで借りて読みました。とにかく湿地の自然描写が素晴らしかったです。法廷シーンもドキドキハラハラしておもしろく読みました。最後に明かされる真相については、頭では理解できるのですが(私個人の感想としては)残念な感じがしました。映画は観ていないのですが、沼地の自然がどんな映像になっているのか興味があります。