高校生シングルマザーの独立精神を応援したくなるYA小説 With the Fire on High

作者:Elizabeth Acevedo
ハードカバー: 400 pages
Publisher: HarperTeen
発売日: (May 7, 2019)
ISBN-10: 006266283X
ISBN-13: 978-0062662835
適正年齢:PG15(高校生向け)
難易度:中級+(スペイン語や俗語が混じっているので、それがわかりにくいかもしれないが、文章そのものはシンプル)
ジャンル:YA/青春小説
テーマ/キーワード:ティーンの妊娠出産、シングルマザー、将来、仕事、生きがい、恋
2019 これを読まずして年は越せないで賞候補

カトリックや福音派など保守的なキリスト教では人工妊娠中絶を罪悪とみなしており、アメリカでは手術が禁じられている州もある。そのような社会背景から、十代で妊娠した少女が出産するケースは少なくない。そして、たいていの場合には妊娠に加担した父親は不在であり、妊娠したティーンの少女は赤ん坊の引き取り手を探すか、自分で育てることになる。

高校生を対象にしたこのYA小説『With the Fire on High』の主人公Emoni Santiago(イモニ・サンティアゴ)は、高校1年生(14歳)のときに妊娠して女児を出産した。相手はひとつ年上のボーイフレンドだが妊娠中に別れ、シングルマザーとして高校に通いながら子育てをしている。親権を共有する元ボーイフレンドは週末だけ娘の面倒を見るが、そのほかの援助はまったくしない。イモニの父は母が亡くなった後、娘を自分の母親に預けて祖先が来たプエルトリコに移住してしまった。社会活動家としてコミュニティのためには援助を惜しまない父親は、明らかに困窮している娘を助けようとはしない。あてにできるのは祖母だけだが、最近その祖母もあてにできなくなっていた。

高校4年生になったイモニは、学業とアルバイトと子育てで、友達と遊ぶ暇などはない。それに、大学進学や将来も考慮しなければならないが、生活費にも困っているし、悩みはつきない。

そんなイモニの生活に唯一の光を与えてくれたのが、学校の授業としてのCulinary art(料理)のコースだ。得意の料理を気楽にするつもりで参加したのだが、このコースを担当するシェフは厳しかった。だが、厳しいシェフと衝突しながら、イモニは調理の才能だけでなく、リーダーシップの才能も見出していく……。

イモニはAfro-Latinx(祖先が主にアフリカ大陸から来た、ラテン系アメリカ人)であり、奴隷制を体験した「アフリカ系アメリカ人」とはカルチャーが異なる。そういったことは、アメリカ国外の人にはわかりにくいし、アメリカ人でも興味がない人にはわからない。そのあたりを描いているのも、この小説のアメリカらしさであり、興味深いところだ。

自分が料理好きということもあって、イモニの料理への情熱に感情移入しやすかったのだが、それだけでなく、14歳でちょっとしたミスをおかした少女が、すべてを背負いながらも、社会を恨むことで終わらずに、勇敢に将来を考えて闘い続けているところにとても好感が抱けた。

イモニは、女性作家だからこそ描けるティーンのヒロインだ。こういうヒロインの存在も、もっと読まれてほしい。

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