フィラデルフィアの豪邸をめぐる寓話のような家族物語 The Dutch House

作者:Ann Patchett
ハードカバー: 352ページ
出版社: Bloomsbury Publishing PLC
ISBN-10: 1526614960
ISBN-13: 978-1526614964
発売日: 2019/9/24
適正年齢:PG15
難易度:上級(ネイティブの普通レベル)
ジャンル:文芸小説/歴史小説(第二次世界大戦後から約60年)
キーワード:家族ドラマ、豪邸

ニューヨークの貧しい家庭で育ったアイルランド系アメリカ人のCyril Conroyは、鋭いビジネス感覚と情熱で第二次世界大戦後にフィラデルフィアの不動産業で成功を収めた。そのCyrilが、まだ自家用車も買えないほどの経済力だったときに見つけた掘り出し物がDutch House(オランダ屋敷)と呼ばれる壮大な豪邸だった。

Dutch Houseの元の持ち主はタバコ産業で巨額の富を得たオランダ系アメリカ人だったが、最後の家族が死んだ後は空っぽのままで野生の動物が巣を作っていた。元の持ち主の肖像画がかかったままで、ノミだらけの屋敷をCyrilは誇りにしていたし、娘のMaeveも出窓がある素敵な部屋を自分のベッドルームに選んで満足していた。けれど、富や豪邸に慣れることができない妻のElnaは次第に不幸になっていった。

息子のDannyが4歳のとき、Elnaは子供たちに別れを告げずに姿を消した。母親と仲が良かったMaeveは悲嘆のあまり体調を壊し、糖尿病を発症して死にかけた。なんとか回復したMaeveは、それからは7歳年下のDannyの母親代わりになった。

子供たちの世話を使用人姉妹に任せきりで仕事にだけ熱中している父が、あるとき若い未亡人をDutch Houseに連れてきた。その時に、MaeveとDannyがDutch Houseを失う運命の歯車がまわり始める……。

この家族物語の語り手はDannyだが、本当の主人公はDutch HouseとMaeveと言えるだろう。また、家族の大河小説的でありながらも、継母のおかげで家を追われた姉と弟のストーリーは、ある意味暗い寓話のようでもある。苦い思い出が多い家なのに、2人ともDutch Houseを忘れることができない。そして、まるで薬物依存症のように、自分のためには良くないとわかっていても、舞い戻ってくる。

2人の両親、継母、Dannyをスプーンで殴って首になった子守など、普通のモラルで判断できない人物像が活きている。

テンポがゆっくりすぎて最初は入り込みにくいかもしれないが、流れに任せれば楽しめるだろう。トム・ハンクスが読んでいるオーディオブックも良いのだが、ハンクスの声が好人物すぎる。Dannyの頑固さや心理的距離など性格の欠陥を行間から読み取るためには、文字で読むほうが良いのではないかと思う。

 

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