歴史小説や人間ドラマとして読み応えがあるミステリ Big Lies in a Small Town

作者:Diane Chamberlain
ハードカバー: 391ページ
出版社: St Martins Pr
ISBN-10: 1250087333
ISBN-13: 978-1250087331
発売日: 2020/1/14
適正年齢:R(成人向け)
難易度:上級(英語ネイティブの普通レベル)
ジャンル:ミステリ
キーワード:人間ドラマ、歴史小説、アメリカ南部、ノースカロライナ、無実の罪、人種差別、性差別、人情

アートの才能に恵まれ、幸せたっぷりだった若い女性Morgan(モーガン)の人生は、信じていた人の過失と裏切りのために、一瞬にして絶望的になった。犯していない罪で3年の実刑を受けて服役中のモーガンのところに、思いがけない救済のオファーが来た。亡くなった有名な黒人アーティストが彼女を指名して依頼した仕事を引き受ければ、早期に釈放してもらえるというのだ。だがそれは、太平洋戦争寸前のノースカロライナの郵便局のミューラルアートの修復というモーガンにはまったく馴染みがない専門分野だった。知識も技術もないモーガンは躊躇するが、危険な刑務所内でこれ以上無事に生き延びる自信がないので承諾する。

モーガン自身が憧れていた亡き黒人アーティストの故郷を訪問したモーガンは、ミューラルアートの奇妙さと、アーティストの娘からの敵意に驚く。モーガンは、戸惑いながらも、人生を立て直すチャンスを活かそうとするが、次第にミューラルアートの謎に引き込まれ、小さな田舎町が隠してきた残酷な歴史や住民の偏見の醜さについて知るようになる。

1940年にそのミューラルアートを描いたのはアナ・デール(Anna Dale)という若い女性アーティストだった。全米のコンテストに勝ってこの仕事を得たアナにとっては、これからアーティストとして生計をたてるためにも重要な初仕事だった。

北部のニュージャージから初めて南部を訪問したアナは、小さな町の人々の偏狭さや自分のライバル視する地元アーティストからの敵意に圧倒される。アーティストとして誇りを持てる仕事をすることだけが希望なのに、よそ者への敵意や人種差別に巻き込まれ、次第に追い詰められていく。そして、ついに悲劇が起こる……。

2018年のモーガンと1940年のアナのストーリーが交互に語られていくうちに、奇妙なミューラルアートに隠された謎が解けてくる。その謎を追う面白さもあるが、奴隷解放後も執拗な人種差別が残っていたアメリカ南部の雰囲気や、不当な扱いを受けた2人の女性の葛藤がこのミステリの真髄になっている。

読者は、モーガンやアナの運命の不条理さに怒りを覚え、悔しさを感じることだろう。だが、読後感は良いので、最後まで読めば満足できることだろう。

John Hartの作品が好きな読者にお薦めしたいタイプの人情ミステリ。

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