飛行機事故でひとりだけ生き残った少年のその後を描く小説 Dear Edward

作者:Ann Napolitano
ハードカバー: 352ページ
出版社: The Dial Press(ペンギンランダムハウス)
ISBN-10: 198485478X
ISBN-13: 978-1984854780
発売日: 2020/1/20
適正年齢:PG15(高校生以上)
難易度:上級/新しい「難易度」レベル 8
ジャンル:文芸小説
キーワード:飛行機事故、サバイバーギルト(生存者の罪悪感)
「Read with Jenna」の選書

作者のAnn Napolitanoがこの小説の発想を得たのは、2010年に南アフリカからロンドンに向かう飛行機がリビヤ上空で墜落し、9歳の少年ひとりだけが生き残ったという実際に起こった事故だった。この事件に取り憑かれたNapolitanoは、その後8年かけてアメリカを舞台にした飛行機事故の小説を書き続けた。それが、このDear Edwardだ。

この小説では、ニューヨークからロサンゼルスに向かう満席の飛行機がフライトのなかばに墜落し、一人をのぞいて全員が即死する。唯一の生存者である12歳の少年Edwardは母の妹に引き取られたが、少年は愛する家族を失った悲嘆と生存した罪悪感を処理しきれない。彼らなりにEdwardのことを思いやる叔母夫婦だが、それぞれに問題を抱えていて、家族として心を通わせることができないでいる。同時に、人々は「唯一の生存者」を有名人や奇跡の聖人扱いし、Edwardは普通の中学生として生きることができない。彼が唯一心を許したのは、同い年の隣家の少女だった……。

この小説では、2つの異なる時間が交互に語られる。ひとつは事故の後のEdwardであり、もうひとつは飛行機が墜落するまでのできごとだ。「ひとりだけ生き残るのは、本当にラッキーなことなのか?」という純粋な問いかけに答えるような事故後のEdwardの部分は、辛いけれども希望が持てる。だが、「死」という結末がわかっているのに、乗客たちを「人」として詳しく紹介していく部分は、残酷に感じた。その残酷さこそが、Napolitanoの描きたかったことだとは思うのだが、それがわかっていても読んでいて楽しくはなかった。

事故の原因など、非常に良く調べていることがわかるし、人物像の描き方にしても優れた小説だと思う。だが、「飛行機が墜落するなんて小説を、COVID-19ですでにストレスがある今どき、なぜ読んでいるの?」という夫に対して擁護する理由がほとんどみつからなかったのも事実だ。

ひとつだけ反論するとしたら「この小説を読んでしばらくは、飛行機に乗るのが嫌になるだろう。でも、今は(ほとんどの人が)飛行機に乗らないから良いチャンスかも」である。

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