作者:Margarita Montimore
ハードカバー: 352ページ
出版社: Flatiron Books
ISBN-10: 1250236606
ISBN-13: 978-1250236609
発売日: 2020/2/25
適正年齢:R(性的シーンは少ないけれど、テーマは大人向け)
難易度:新しい10段階レイティングで7(10が最も難しいレベル)
カテゴリ:大衆小説/スペキュラティブフィクション
テーマ、キーワード:タイムトラベル、愛、人間関係、人生の意義
感情:😢😂😮❤️
19歳の誕生日を翌日に控えたOona(ウーナ)は、1982年のニューイヤーズ・イブ(大晦日)のパーティでボーイフレンドのDaleと一緒にロックバンドのヨーロッパツアーに行くか、親友と一緒に著名なロンドン・ビジネススクールに留学するか決めかねていた。ちょうど新年になったときにOonaは気を失い、目覚めたら2015年になっていた。心は19歳なのに51歳の体に閉じ込められて混乱するOonaに、パーソナル・アシスタントがその前の年のOonaからのメッセージを渡す。Oonaは毎年誕生日になると別の年に飛ぶのだが、その順番はランダムなのだと言う。
せっかく人間関係を作っても、新年になると別の年に飛んでしまうので人間関係を継続することができない。翌年の自分を助けるために自分が残したメッセージを信じると間違いをおかすこともある。自分がおかした失敗を知らずして、そのツケを払うこともある。そんなバラバラな人生をOonaは傷つきながら飛び続ける。
タイトルにある「out of order」には「故障」という意味とorder(順番)がバラバラという2つの意味がある。その両方を含ませたOona Our of Orderというタイトルはなかなかのものだと思った。
思わぬ年に飛んでしまう困ったタイムトラベラー、という点ではThe Time Traveler’s Wifeを連想させる小説だが、それよりも軽く、切ないところもあるが涙が出るほどの心の痛みはない。Oonaの悩みは最初から最後まで裕福な中流階級の女性特有のものであり、自己憐憫も私が共感できるものではなかった。最初に飛んだときに頭の中身が19歳だったことを考えると「仕方ないかな」とも思ったが、自分が19歳だったときに悩んでいたことや将来について考えていたことを振り返ると、やはり自分ならOonaとは異なる部分で悩み、落ち込んでいただろうと思う。
恋愛や親子関係についても、もっと深く掘り下げることができたのではないかと思い、そのあたりも残念だった。けれども、リアルの世界がCovid-19で深刻な現在は、かえってこの軽さが魅力かもしれない。
もうひとつ残念だったのは、タイムトラベルのルールが一貫していないことだ。フィクションであっても一定の論理がなくてはならないのだけれど、その年を1回しか生きられないとしたら、新年に目覚めるたびに過去の自分からの手紙が常にあるというのはおかしい。タイムトラベルだけでなく、パラレルワールドもあるということになり、そうであればパラレルワールドのOonaは別のorder(順番)で別の人生を生きているのかもしれない。それについてまったく触れていないので、やはりSF好きの読者には許せないのではないかと思った。