自分たちの土地とアイデンティティを守るための、アメリカ先住民の小さくて大きな闘い The Night Watchman

作者:Louise Erdrich (ほかの作品に、全米図書賞を受賞したThe Roundhouseなど)
Hardcover: 464 pages
Publisher: Harper
ISBN-10: 0062671189
ISBN-13: 978-0062671189
発売日:2020年3月3日
難易度:上級(新しい難易度で8/10)、幽霊との対話と現実が混じり合ったりするので慣れていないと混乱するだろう
適正年齢:PG 15+(高校生にも読んでもらいたい内容だが、性的シーンや残酷な部分あり)
ジャンル:文芸小説/歴史小説
キーワード:アメリカ先住民、1950年代、ドーズ法、終焉・移住法、ノースダコタ州、女性に対する暴力

かつては北米全域に1億人以上住んでいたと言われるアメリカ先住民は、ヨーロッパからの侵入者によって殺戮され、住んでいた場所を追いやられた。現在のアメリカは、後からやってきた侵入者によって作られた国家である。

白人の侵入者よりも前から住んでいる先住民は、その国家と主にヨーロッパ系の白人で構成されてきた政府や連邦議会から、厄介なよそ者のように扱われてきた。19世紀末には「先住民が自給自足して自立するために」という身勝手な目的で「インディアンの同化政策」と表現されるドーズ法が成立し、先住民は農耕には向かない荒れ果てた地を与えられた。

そのうえ、1950年代には、Termination Bill(終焉法)が議会で提案された。これは、先住民をemancipate(解放)するという聞こえがよいものだが、実は、「独立」という名のもとに政府が先住民への責任を放棄するというものだった。

Louise Erdrichの最新作であるThe Night Watchmanの中心人物のひとりThomasは、Erdrichの祖父がモデルになっている。ノースダコタ州の「タートルマウンテン」のインディアン保留地では、現金を得られる仕事といえば、宝石を使って政府の軍需品やブローバ時計の部品に穴を開ける工場での勤務くらいだ。Thomasはここで夜警をしながら、タートルマウンテンの人々のリーダー的な役割を果たしている。Thomasは、Termination Billが自分たちにとって良いものではないと直感し、徹底的に学んだうえで、政府に抗議をする計画を立てる。

もうひとりの中心人物は、この工場で働くThomasの姪であるPatriceだ。ティーンでありながら経済的に一家の面倒をみているPatriceは、アルコール依存症で暴力的な父親から現金を隠し、周囲の男たちからの望まない関心を巧みにかわし続けている。

The Night Watchmanは、全米図書賞を受賞したThe Roundhouseと比べると、まとまりがない。ThomasとPatriceの2人の闘いが描かれているが、それらがうまく絡まっていないので、2つの独立した物語のような印象がある。

とはいえ、読んで決して後悔する本ではない。特に、周囲から「ピクシー」という渾名で呼ばれるのを嫌っているPatriceという少女が魅力的だ。白人の教師(高校の数学とボクシング部コーチ)から惚れられて執拗につきまとわれ、同級生の男子たちに騙されて集団性暴力を受けそうになっても、冷静にそれを切り抜ける。幼い頃からアルコール依存症の父に対応し、家族を経済的に支えてきたPatriceは、サバイバルの能力を身に着けていたのだ。

作者のErdrichは、祖父をモデルにしたThomasを通して先住民の立場や考え方を語ってくれるが、だからといって彼らを美化することはしない。居留地にも、その外にも、女を利用して破壊する暗い欲望の構造があることを描いている。

Erdrichは、ふだん私たちが足を踏み入れることがない世界に扉を開け、招き入れてくれる。しばしの間でも、そこを訪問させてもらえるのはありがたいことだと思っている。

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