ステレオタイプではない、イギリスの黒人女性を描いた2019年ブッカー賞受賞作 Girl, Woman, Other

作者:Bernardine Evaristo 
Hardcover : 464
ISBN-10 : 080215770X
ISBN-13 : 978-0802157706
Publisher : Panguin
発売日:2019/5/2(UK)2019/12/3(US)
適正年齢:R
難易度:上級
ジャンル:文芸小説/現代小説
キーワード:イギリス、黒人女性、LGBTQ+、フェミニズム、レイシズム
文芸賞:2019年ブッカー賞受賞作

国際的に有名な黒人作家の多くはアメリカ人であることが多い。奴隷としての過去を持つアフリカ系アメリカ人だからこそ書くことができる文芸作品は貴重であり、それらを通して私たちが歴史に触れることができるのはありがたいものだ。

だが、それらがどんなに優れた作品であっても、全世界の黒人を代表するものではない。たとえ同じ国に住んでいて同じような肌の色を持っていても、ひとりひとり体験は異なるものだ。当たり前のことだが、つい忘れがちだ。というか、まったく考えたことがない人もいるだろう。

そういった読者に蹴りを入れるような文芸作品が、2019年にブッカー賞を受賞したBernardine EvaristoのGirl, Woman, Otherだ。オバマ元大統領が2019年の推薦書のひとつに選んだことでも知られている。

小説の中心になっている存在がレズビアンで社会主義者のAmmaだ。黒人女性として差別的な待遇を受け、社会の辺縁にいることを誇りにすら思っていたようなAmmaだが、50代になって思いがけない成功を収める。なんとあのNational Theatreで、自分の作品を上演できることになったのだ。突然メジャー扱いされるようになったAmmaは、嬉しいのと同時に自分が政治的に「sell out(裏切り者)」ではないかと訝ったりもする(Ammaは作者のBernardine Evaristoと同じような経歴を持つために自伝的な存在とみられている)。

記念的なその初演の場に、Ammaの娘と昔からの友人が到着し始める。そして、何らかの理由で初演の場に居合わせた12人の女性が、異なる視点でそれぞれの人生を振り返り、友人や自分を分析し、吟味する。彼女たちのほとんどが、異なる背景を持つ黒人女性だ。祖国や文化が異なるだけでなく、家族構成や社会経済的背景が異なる。有名大学で教育を受けて経済的に成功している者もいれば、レズビアン思想家のカルト的な罠にはまってしまう者もいる。「イギリスに住む黒人女性」と言っても、よくあるステレオタイプにおさまる者はひとりもいない。個人的に黒人と深くかかわる人生を送った白人の登場人物もそうだ。

レズビアンの関係にもドメスティック・バイオレンスはあるし、他の人から「黒人」としてひとくくりにされる人の間にもお互いへの偏見がある。そのあたりも、とても正直な作品だ。また、アメリカで出版される作品と印象がかなり異なるのも、アメリカの作品に慣れた私たち読者には新鮮だ。

大文字や句読点がないので、文章が切れずにどんどん続いていくスタイルも(うまく流れているときには)心地が良い。

表現や分析が表層的だと感じた部分もあったし、中途半端だと感じた章もあったが、総合的によみごたえがある作品だった。全部読む根気や自信がない読者も、あちこちつまみ食いしてみて、興味が出てきたら後で最初に戻ってきて読むと面白くなるかもしれない。締めくくりの部分がとても良かったので、そこは最後にぜひ読んでほしい。

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