作者:Alice Feeney (Sometimes I Lieの作者)
Hardcover : 320 pages
ISBN-10 : 1250266076
ISBN-13 : 978-1250266071 P
Publisher : Flatiron Books
発売日:July 28, 2020
適正年齢:PG15
難易度:8/10
ジャンル:サスペンス
キーワード:連続殺人、謎の犯人、複数の視点、嫉妬、復讐
生後まもない娘を失い、結婚も崩壊したAnnaは、アルコールで心の痛みを和らげる孤独な生活を送っている。唯一の生きる希望は、昼食時ニュースのアンカーの仕事だ。長い下積み生活を送っていたのだが、アンカーの女性が出産で休暇を取ったために、突然その代役が転がり込んできたのだ。その女性が育児休暇中にふたたび妊娠して出産したために、Annaの地位は安定していたかのようにみえた。
ところが、休暇を取っていた女性アンカーが突然仕事に戻り、Annaは昔のレポーター役に降格されてしまった。
ちょうどその前夜にAnnaの故郷で女性が殺害され、家庭と職と美貌に恵まれた女性アンカーはAnnaにそのレポートをするよう命じた。駆け出しレポーターの役目を押し付けられたAnnaは屈辱を覚えるが、引き受ける。気が進まないのは他にも理由があった。現場はAnnaにとって思い出したくない過去がある故郷のBlackdownであり、元夫はその町の刑事だったからだ。
Annaと離婚した後にロンドンから故郷に戻ったJackは、Blackdownの主任警部をしているが、自暴自棄な生活をしている。鋭利で若い女性の刑事とパートナーを組んでいるが、強い信頼関係は築けないでいる。殺害されたのは自分が肉体関係を持っていた女性で、事件の寸前に現場で一緒にいたのだった。それを誰にも伝えることができないままにJackは事件を担当する。そのうえ、すでに葛藤しているときに現れたBBCのレポーターは、元妻だ。
Anna(Her)、Jack(Him)、殺人犯、という3人の異なる視点で、連続殺人と、その背後にある高校時代の事件が少しずつ明るみに出ていく……。
英語には「He said, she said」という表現がある。何かが起こったときに、同じ体験をした男性と女性では言い分が異なり、何が本当のことなのか聞いているほうには判断できないことを言う。このHis & Hersもそういった含みがあり、異なる視点で過去と現在を読者に説明していくのは面白い設定だ。それに「殺人犯」の視点も加わるのだが、わざと男性か女性かわからないようにできている。また、AnnaかJackの可能性もちらつく。
そういった設定は面白いし、登場人物たちに過去や偽りがあるのも興味深い。どんでん返しも何度かあるので、それを高く評価している読者は多いようだ。
とはいえ、あまりにも都合が良い偶然が多い。人間関係や人の言動にも説得力がないところがかなりある。そういった部分が気になったので、高い評価を与えることはできなかった。
けれども、何度も驚かせてほしい読者にはおすすめのサスペンスである。最初のうちペースが遅くて飽きてしまう読者もいるようだが、後半はスピードアップするのでそこまで辛抱してほしい。