落ち込んでいる人にもお薦めできる「自殺」をテーマにした心優しい小説 The Midnight Library

作者:Matt haig
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 0525559477
ISBN-13 : 978-0525559474
Publisher : Viking
発売日:September 29, 2020
適正年齢:PG15
難易度:7/10
ジャンル:現代小説/SF
キーワード:パラレルワールド、別の人生、自殺、やり直し

Nora Seedは、多くの才能に恵まれていたのに、何ひとつ成功せずに30代になってしまった。十代の頃にはオリンピック金メダリストの将来をささやかれるトップ水泳選手だったのに水泳をやめ、結婚式の直前に婚約者と別れ、兄が結成したロックバンドに加わったものの、ブレイクアウトしかけているときにバンドを離れた。大学で哲学を学んだのに、それを活かす仕事には就いていない。兄やバンドの仲間から憎まれ、婚約者からも恨まれ、楽器店の仕事も失い、アパート代を払うお金の余裕もなくなった。孤独な生活を支えていた唯一の存在である猫が事故死し、Noraは誰の役にも立たない無駄な人生をやめることを決意した。

自殺を試みたNoraは、不思議な図書館に到着し、辛い時期に優しい言葉をかけてくれた高校の図書館司書に再会した。彼女によると、そこはNoraの生と死の間にある「真夜中の図書館」だと言う。大小の選択を繰り返すことで人生は変わる。 その図書館にある無限の数の本は、異なる選択をした場合のパラレルワールドでのNoraの人生なのだ。それらをトライして、気に入ったらその人生にとどまることができると図書館司書は言う。

Noraには「あの時、あれを選んでいたら…..」と後悔していることがいくつもある。別の選択肢を選んだNoraは、オリンピック金メダリストになった人生、ロックスターになった人生、婚約者と別れずに結婚した人生…..といくつもの人生を試すが、いずれの人生にも大きな悲しみがあった。

ついに完璧な人生を見つけたNoraだが、その人生はあまりにも完璧で、長続きしない予感があった……。

「もしあの時に異なる選択をしていたら、自分の人生はもっと良くなっていたかもしれない」という後悔は、多くの人が一度は抱いたことがあるだろう。何もかもうまくいかずに絶望したこともあるかもしれない。

そういうときに「自殺」に関する本を読むのはおすすめしない。心が弱くなっているときには、それにひきずられてしまうからだ。

Matt HaigのThe Midnight Libraryでは主人公のNoraが自殺を試みる(そして、成功しかけている)。だから、心が弱っている人にはお薦めしないほうが良い本のように感じる。しかし、最後まで全部読むと、印象がすっかり変わる。どんな人生でも、自分がこれまで気づいていなかった素晴らしさがあることを教えてくれるのがこの小説だ。

主人公のNoraは、自己評価が低いけれど、本当はとても良いところが多い女性だということも、パラレルワールドをいくつか生きた彼女の体験から知ることができる。これも、読者が共感を覚えるところだろう。オリンピック金メダリストの人生も、ロックスターの人生も、それを生きたからこそ、Noraは「選ばなくてよかった」と心から思えるのだし、そこで再会した家族とのやり取りから、実際の自分の人生で誤解してきたことを悟ることができたのだ。

心がギスギスしている人にお薦めの、心優しいパラレルワールドSFである。

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