魂とひきかえに不老不死を手に入れたアディ・ラルーの、誰からも忘れ去られる人生 The Invisible Life of Addie LaRue

作者:V.E. Schwab
Hardcover : 448 pages
ISBN-10 : 0765387565
ISBN-13 : 978-0765387561
Publisher : Tor Books
発売日:October 6, 2020
適正年齢:PG15+
難易度:7/10
ジャンル:ファンタジー/ラブストーリー
キーワード/テーマ:不老不死、悪魔との取引、女性の自由、人生の意義、ミューズ、愛、復讐、戦い、LGBTQ+
2020年これを読まずして年は越せないで賞候補作

 

 

17世紀末のフランスの田舎で産まれたAddie(アディ)は、アーティストとして自由に生きることを夢見ていたが、女に許された選択肢は結婚して夫と子供の世話をして老いていくことだけだった。1714年に子持ちの寡夫との結婚を強いられたアディは、式に向かう途中に逃げて闇の神であるLuc(ルーク)と取引をする。アディは「永久に誰にも属さず、自由でいる」ことを願い、ルークはひきかえに彼女の魂を求めた。むろん取引には人間が想像しない落とし穴がある。両親や親友から忘れ去られたアディは結婚を強要されることはなくなったが、不審者扱いされるために村にとどまることはできなくなった。誰からも忘れ去られることで自由になったアディだが、目を離すたびに忘れられてしまうために、仕事に就くことも、宿に泊まることもできない。不老不死であっても、飢餓や寒さ、暴力行為の痛みからは逃れられないが、アディは、ルークに対する恨みを動機に「魂を引き渡して楽になること」を拒否し、生き延びる決意をする。

それから300年、アディはフランス革命、第一次世界大戦、アメリカ禁酒法時代、第二次世界大戦を直接に体験してきたが、まだ生きることに飽きてはいなかった。ルークが巧妙に作った取引のために、自分の本名を言うことも、自分で文字を書くことも、アートを創作することも不可能にされてしまったのだが、長年の間に抜け穴を見つけていた。自分でアートを作って残せなくても、ミュージシャンやアーティストに創作の意欲やきっかけを与える才能があることにアディは気付いていた。彼らはアディのことを忘れてしまうのだが、彼女が関わったアートは残る。それは生きがいだったが、忘れ去られる寂しさに時おり押しつぶされそうになった。あまりの寂しさに、憎んでいるルークが恋しくなることもあった。

ある日アディは自分を覚えている若い男Henry(ヘンリー)に出会った。過去300年で初めてのことだった。その貴重さのためにアディはヘンリーとの絆を強める。だが、ヘンリーにもアディのような秘密があった……。

過去数年ですっかりファンタジー界の大物になったV.E. Schwabは、善と悪が混じった複雑な登場人物を描くことで知られている。扱っているロマンスも、ロマンス小説によくある男女の恋愛ではない。恋愛対象のジェンダーも流動的だし、よくあるタイプの「嫉妬」もない。皆、自分の存在の意味や意義に取り憑かれているし、愛も利己的だ。だからこそ、読み応えがある。

この小説の醍醐味は、アディとルークの300年にわたる心理的なチェスゲームと言えるだろう。最初の100ページほどは退屈だと感じる読者がいると思うが、それを我慢すれば最後にきっと「すごいラブストーリーを読んだ」と満足できるだろう。

Leave a Reply