作者:Marie Benedict
Publisher : Sourcebooks Landmark
発売日:December 29, 2020
Hardcover : 288 pages
ISBN-10 : 1492682721
ISBN-13 : 978-1492682721
適正年齢:PG15(大人向けの小説だが誰が読んでも特に問題はない内容)
難易度:6
ジャンル:歴史小説(実話を元にしている)
キーワード:アガサ・クリスティ、失踪事件、実話、ミステリ
ミステリ作家のアガサ・クリスティが1926年に11日間にわたって行方不明になる事件があった。クリスティのファンならどこかで読んだことがあるはずだ。この失踪事件でアガサの夫に愛人がいる事実が浮上し、夫による殺人も疑われた。アガサはHarrogate Hydroという保養地のホテルに「Teresa Neele」という名前で泊まっていたことがわかったが、当時のメディアからは彼女が記憶をすっかり失っていて、夫を識別することができなかったということになっている。興味深いのは、夫の愛人の名前がNancy Neeleだったことだ。アガサとアーチボルドはこの事件から2年後に離婚し、アーチボルドは愛人のNancyと再婚した。そして、アガサのほうは2年後に15歳年下の考古学者、マックス・マローワンと再婚した。
ニューヨーク・タイムズ紙はこの流れを新聞記事を含めてわかりやすく解説している。
有名な作家の有名な事件なので、事実を推察する本や映像はこれまでにも数え切れないほど出ている。だから、歴史小説家のMarie Benedictの最新刊の場合にはこれまでとは異なる新鮮な視点を期待していた。
結論から言うと、新しい発見はないし、説得力にも欠ける。しかし、これまでクリスティの失踪事件を知らなかった読者には興味深く読める歴史小説ではないかと思う。アガサとアーチボルドの出会いから事件の日まで続くアガサのナラティブと、事件の初日からのアーチボルドの視点でのナラティブが交互に現れることで、読者はアガサの心境に入り込むことができる。「実際には何が起こったのか?」という点では、私は作者の想像に完全に同意することはできない。夫や愛人に対する憤りや復讐したい気持ちはあったと思うが、そこまで計算的な行動ではなかったと思う。
軽く読める文章だし、ページ数も少ないので、気晴らしになにか軽いものを読みたい方におすすめ。