詐欺師の母に育てられた少女の痛快な反撃スリラー The Girls I’ve Been

作者:Tess Sharpe
Publisher : G.P. Putnam’s Sons Books for Young Readers
発売日:January 26, 2021
Hardcover : 368 pages
ISBN-10 : 0593353803
ISBN-13 : 978-0593353806
適正年齢:高校生
難易度:6(センテンスが短く、物語の展開のテンポが速い)
ジャンル:YA/犯罪スリラー
キーワード:con、詐欺、偽りのアイデンティティ、LGBTQロマンス

17歳の女子高生Noraにとって現時点で最大の問題は、親友の少年Wesと現在のガールフレンドIrisと3人で会うことだった。中学生の頃からの親友で恋人になったWesとはあることがきっかけで別れ、ようやく友人として仲直りしたところだった。けれども以前から2人の友人だったIrisと黙って付き合いはじめていたのがバレてWesとの関係は再び険悪なムードになっていた。3人で一緒にチャリティの寄付金を銀行におさめに行くことになっていたのだが、気がすすまないNoraは遅れてやってきた。3人が銀行のロビーにいるときに2人の銀行強盗が銀行を襲い、そこにいた者をすべて人質にした。Noraは直感的に彼らが非常に危険だということを察知した。

銀行強盗たちが危険だと査定できたのは、Noraが普通の女子高校生ではないからだ。Noraという名前ですら本名ではなかった。

Noraの母は詐欺師で、娘が幼いときからターゲットにした男を騙すために利用してきた。Noraが母から学んだのは、ターゲットが変わるたびに異なる少女になることだ。ある時はブロンドでおとなしい少女、ある時はスポーツ万能な黒髪の少女なり、そのたびに名前も変わった。母が選んだ男たちから虐待を受けながらも母の言いなりになってきたNoraだが、これまでのターゲットとは異なる大物の犯罪者を母が愛して結婚した時に人生が変わった。12歳になっていた少女は、命がけの決断をして彼らから逃げた。

母からずっと前に逃げていた姉の援助で新しいアイデンティティを得たNoraは5年間無事に身を隠していた。けれども、銀行強盗のために義父から発見される恐れが出てきた。自分のサバイバルだけでなく、親友とガールフレンドの命も救わなければならない。Noraは詐欺師としての長年のトレーニングを活かして絶体絶命の状況から生還する計画を立てる……。

高校生の読者を対象にしたYAミステリや犯罪小説がとても流行っている。これもそのジャンルに属するのだが、高校生だけでなく一般読者を対象にしているような内容だ。命の危険だらけの状況で、Noraがいくつもの計画を立て、それがうまく行かなかったときに状況を再査定して再び新しい計画を立てるところが面白い。

主人公のNoraはバイセクシュアルなのだが、それがとても普通に描かれている。数年前にはまだYA小説でLGBTQの恋愛が特別扱いだったから、アメリカの社会は急速に変わっているといえるだろう。

この小説は、先日ご紹介したEnola HolmesをNetflixで演じているMillie Bobby Brownが主人公でNetflixで映像化されるとのことだ。Noraのタフさや3人の友情も好感が抱けるし、Netflixがそれをどう映像化するのか楽しみだ。

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