女性刑事の複雑な人間性が活きている文芸スリラー When the Stars Go Dark

作者:Paula McLain
Publisher : Ballantine Books
刊行日:April 13, 2021
Hardcover : 384 pages
ISBN-10 : 0593237897
ISBN-13 : 978-0593237892
適正年齢:一般向け(PG15)
読みやすさ:8
ジャンル:文芸スリラー
キーワード、テーマ:殺人、子供の誘拐、子供を失う悲嘆、捜索、家族ドラマ

1991年。Anna Hartは、サンフランシスコ警察で失踪者の捜索を専門にするベテラン女性刑事だ。家族の世話よりも仕事にのめり込みすぎるAnnaは、わずかな不注意で幼い息子を失った。そして、これまで自分の理解者でいた夫から責められ、家を出ていくように言われる。

職場の上司から求めてもいない休暇を言い渡されたAnnaは、養父母に育てられた故郷の村に戻る。そこでは、ティーンの少女が行方不明になっており、Annaは警察官になった幼馴染から非公式の援助を求められる。事件について調べていくうちに、これまでにも行方不明になった者が多くいることがわかってくる……。

Paula McLainは、ヘミングウェイの妻の視点で書いたThe Paris Wifeなどの歴史小説専門を書く作家として知られている。このジャンルはアメリカでよく売れるジャンルであり、McLainの本は必ずベストセラーになる。それなのに、彼女の最新作は文芸スリラーという別のジャンルなのだ。混乱しているファンもいるようだ。

読んでみて、私は良い意味で驚いた。

表層的には失踪者を見つける女性刑事が主人公のミステリーなのだが、彼女を含めて登場人物がそれぞれに複雑な人物であることがわかる。主人公の生い立ちや、舞台になっている村の不吉な雰囲気もよく描かれている。自分の仕事でもないのに行方不明の少女を探さずにはいられない女性刑事は、正義感が強い善人ではなく、働かずにはいられない依存症のような仕事人間だ。親としても妻としても役不足だと自覚している。これまで男性主人公にはよくあったタイプだが、そういった女性を説得力ある文章で描いているところに感心した。

読後の余韻も長く続く。あまりにも多くの伏線があるために混乱する読者がいると思うが、努力の価値はあるのでぜひトライしてほしい。

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