作者:Annie Lyons
Publisher : William Morrow
刊行日:September 8, 2020
Hardcover : 384 pages
ISBN-10 : 0063026066
ISBN-13 : 978-0063026063
適正年齢:一般向け(PG12。死を扱っているが問題になるシーンや表現はない)
読みやすさ:7
ジャンル:文芸小説
テーマ、キーワード:高齢者、人生の終焉、死ぬ権利、過去の後悔、家族関係、人間関係、人との繋がり
85歳になったEudora Honeysettは、うるさくて馬鹿げたこの世界に飽き飽きしている。病院でチューブに繋がれた死を迎えることだけは避けたいEudoraは、心身が健康な今のうちに理想的な死を迎えたくて自殺幇助をしてくれるスイスのクリニックに希望を申し込んだ。だが、自殺幇助の受け入れ基準は厳しい。スイスのクリニックの担当者と医師は、Eudoraの心理状態を確認するためにじっくりと時間をかけている。
そのプロセスが進んでいるとき、隣の家に若い家族が引っ越してきた。母親は妊娠中で、10歳の娘Roseの元気さについていけない感じだ。人見知りしない様子のRoseは、Eudoraが冷たくあしらうのにずかずかと生活に入り込んでくる。そのうちに、妻を失ってから健忘症が出てきた近所の老人Stanleyまで巻き込み、Roseによって3人はBFF(ベストフレンズ・フォーエバー、永久の親友)ということになる。
Eudoraが人間と人生に見切りをつけたのには理由があった。自分を心から愛してくれた優しい父は戦死し、妊娠していた母親はそのショックでうつ状態になり、気難しい女性になってしまった。父親が亡くなった後に生まれた妹は赤ん坊のときから扱いが難しく、母と衝突を繰り返した。Eudoraは問題行動を起こす妹を愛し、かばってきたのだが、衝撃的な裏切りにあう。愛した者すべてから利用されたEudoraは、誰にでも優しかった自分を捨てて心を閉ざしたのだった。
Roseによって閉じた心を開き始めたEudoraだが、ふたたび傷つくのは嫌だから脆弱になることを恐れていた。人間関係にふたたび懐疑心を抱いていたときにスイスからようやく許可が届く。EudoraはBFFには「旅行に行く」と伝えてスイスに行く準備を整えた……。
Eudora Honeysettは、Fredrik BackmanのA Man Called OveやGail HoneymanのEleanor Oliphant Is Completely Fineの主人公を連想させるキャラクターで、最初は「嫌な人」だと感じるが、それには辛い過去があったことがわかる。
悲しいけれども希望にあふれた心優しい小説である。そして、ユーモアのセンスもたっぷりある。
人間に嫌気がさしている人にお薦めしたい1冊。
私は『Eudora Honeysett Is Quite Well, Thank You』というイギリス英語らしさがよく出ているタイトルで読みました。物語自体は先が読める展開ですが、それでもほろり、ほっこりさせられるいい小説でした。自分の死についてもいろいろ考えさせられました。