「隣はなにをする人ぞ」近隣コミュニティが抱える秘密と家族ドラマ Cul-de-sac

作者:Joy Fielding
Publisher ‏ : ‎ Ballantine Books
刊行日:August 10, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 384 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1984820257
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1984820259
対象年齢:一般(R:性描写)
読みやすさ:7
ジャンル:ドメスティック・サスペンス
キーワード、テーマ:近隣コミュニティ、家族の秘密、家族関係、銃、ドメスティック・バイオレンス

フロリダ州の静かな近隣コミュニティが舞台。フランス語のCul-de-sacは日本では「袋小路」にあたるが、英語圏では「よそ者が入り込むことがほとんどない、閑静な住居ゾーン」という良い意味で使われ、家の買い手にとってはそれが魅力になる。

高校教師のMaggieと高級車ディーラーのCraigの夫婦は、カリフォルニア州でのある出来事が原因で遠く離れたフロリダ州に引っ越してきた。Craigはすぐに仕事をみつけ、16歳の娘は新しい学校で人気者にり、小学生の息子も学校に慣れてきた。だが、Maggieだけは PTSD (心的外傷後ストレス障害)で普通の生活を送ることができない。何にでも過剰反応する妻に疲れた夫が家を出てしまい、高校生の娘はMaggieに冷たくあたる。

隣家のNickとDaniの夫婦は、中産階級が対象になっているこのCul-de-sacでは異質の存在だ。夫のNickは高名な医師であり、妻のDaniは歯科医院を経営している優秀な歯科医だ。外交的なNickは多くの人に好かれているが、Daniのほうは近所の者に高慢でつっけんどんな対応しかしないので嫌われている。けれども、夫婦には誰も知らない深刻な秘密があった。

この近所で唯一の高齢者であるJuliaは、大学教授の夫が亡くなってからひとり暮らしをしている。それに満足しているのに、息子と新しい妻が何度もやってきてJuliaを高齢者向けの住居コミュニティに移そうとするので迷惑している。そこに、息子と仲違いしている孫が転がり込む。

OliviaとSeanの夫婦は、妊娠出産で専業主婦をしていたOliviaが職場に戻って成功しているのに反し、夫のSeanは職を失ってから再就職口を見つけられない。Seanはアルコール依存症になり、妻に嘘をつくようになる。

AidenとHeidiは新婚だがすでに関係が危うくなっている。その原因は子供の頃からAidenを心理的に支配してきた母親だ。息子夫婦の関係を壊す決意をしている義母に強い態度を取らない夫に対してHeidiは失望してきている。

MaggieとCraigの娘はNickとDaniの息子2人のベビーシッターとして雇われる。そこで、Nickが銃のコレクターであることを知るが、両親には打ち明けない。

これらの隣人たちが数々の出来事で絡み合い、緊張感が高まり、ある夜ついに事件が起きる……。

いわゆる「殺人」はあるが、ミステリというよりも家族ドラマであり、アメリカで「ドメスティック・サスペンス」のカテゴリに入る。多様な人々の行動が興味深く、そういったものが好きな読者であれば最初から最後まで楽しめるであろう。

登場人物たちが銃を簡単に所持するところが「さすがフロリダ州!」という感じだ。アメリカ全域がこうではないので、あくまで「フロリダ州」の雰囲気を楽しんでいただきたい。

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