アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人の民間信仰をテーマにした児童書ファンタジー Root Magic

作者:Eden Royce
Publisher ‏ : ‎ Walden Pond Press
刊行日:January 5, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 352 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0062899570
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0062899576
適正年齢:小学校高学年から中学生
読みやすさ:5
ジャンル:歴史小説、ファンタジー、ホラー、パラノーマル
キーワード、テーマ:アメリカ南部、公民権運動時代、民間信仰、ルートマジック、人種差別、幽霊、きょうだい愛、友情、
2021年 これを読まずして年は越せないで賞候補作

前回ご紹介したOphie’s Ghostsに引き続き、アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人に伝わる民間信仰をテーマにしたmiddle gradeの児童書ファンタジー。似ているところはあるけれど、こちらは1963年の公民権運動時代のサウスカロライナが舞台であり、内容もまったく異なる。

南北戦争が終わって奴隷制度が廃止された後でもアメリカの南部では「ジム・クロウ法」など人種隔離政策があり、堂々と差別や差別に基づいた殺人が行われてきた。1954年に最高裁が「ブラウン判決」を下し、しだいに公立学校が異なる人種の生徒を受け入れるようになってきた。この小説の主人公のJezebel(Jez)は知らない子供たちに混じって新しい学校生活を始めたのだが、「root magic」を行う家族だということでいじめの対象になっている。母は数年前に姿を消した父のことを語ることを禁じているが、父がいないこともいじめの材料になっている。

別のクラスにいる双子の弟Jayは人気者で友達も多い。これまでとても仲良しだったのだが、最近は距離ができている。

人種差別者である地元の白人の保安官補佐はJezの家族をターゲットにして繰り返しハラスメントをしてきて、家族は危険を感じながら生きていた。Root Magicのベテランである祖母が亡くなり、ハラスメントが悪化してきたことから、JezとJayは母の兄であるDocからroot magicのトレーニングを受けることになった。トレーニングを始めてから、Jezは不思議な体験をするようになる…。

幽霊を含むパラノーマルな存在のことを「haint」と呼ぶとか、haintが塩やブルーの色が嫌いだとか、これまで知らなかったことを学べて興味深かった。南部の家にはミントブルーのペンキがよく使われていて綺麗だと思っていたが、それはhaint blueと呼ばれていて、悪霊を家の中に入れないためのおまじないだったのだ!

暗くて不気味な雰囲気もあるし、友情もあって面白かったのだが、父親が姿を消したことに関して母親が子供たちに語ることを禁じる本当の理由とか、新任の保安官の母親への対応とか、読者である10歳前後の子供たちに何を伝えたいのか最後までよくわからなかった。特に意図がないのであれば、繰り返す必要はないのではないかとも思った。また、双子の弟との仲の複雑さもしっかり描かれていなかったように感じた。

そういう疑問はあったが、総合的には読者評価が非常に高い今年おすすめの児童書である。

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