ゲイの息子たちを殺されたことで繋がった黒人と白人の父親の復讐劇 Razorblade Tears

作者:S.A. Cosby
Publisher ‏ : ‎ Flatiron Books
刊行日:July 6, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 336 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1250252709
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1250252708
適正年齢:成人(バイオレンス)
読みやすさ:7
ジャンル:犯罪小説
キーワード、テーマ:米国南部、LGBTQコミュニティ、偏見、ヘイト、復讐

人種差別だけでなく多くの偏見がはびこる米国南部バージニア州が舞台。人生の後半に差し掛かった黒人のIkeと白人Buddy Leeには2つの共通点があった。どちらもバイオレントな犯罪で服役した過去があり、ゲイに対して強い偏見を抱いていたことだ。Ikeの息子IsiahとBuddy Leeの息子Derekは大学時代からのカップルで、代理母の協力で娘を持ち、結婚した。黒人と白人のゲイカップルということに強い反感を抱いていた父親2人は結婚式に参列しなかったのだが、IsiahとDerekが惨殺されたことをきっかけに同じ目的で繋がった。息子たちを殺した犯人を突き止めることだ。息子たちが生きていたときには偏見を捨てようともしなかった2人は、手遅れになってから息子たちへの愛のほうが偏見より強いことに気づいたのだ。

この犯罪小説ではこの国に存在する多様な「偏見」が率直に語られる。たとえば偏見が強い南部でゲイとして生きる辛さを語った者に対して「黒人として生きるほうが、ゲイよりも楽だと思っているのか?」と憤るIkeや「ゲイに対する偏見は黒人コミュニティのほうが強い」といった現状などだ。「強い偏見を持つ大人たちに囲まれて育った場合には偏見や差別に気づかない」「気づいた後に行動を変えることが重要」というメッセージもあちこちに含まれている。

とはいえ、多くの読者にとっての魅力は社会的なメッセージではなく、刺激的なアクションと男の哀愁がふんだんに盛り込まれた復讐劇だろう。バイオレンスやホラーが苦手な私には読みづらいシーンがかなりあったが、読み始めたら最後まで一気に読んでしまった。イーストウッドの『グラン・トリノ』のファンなら絶対に楽しめる作品だ。イーストウッドがあと20才若かったらデンゼル・ワシントンとの共演で映画化されたかもしれない、と想像してしまった。

Leave a Reply