長い短編小説だと思って読めば良さがわかる世紀末小説 Leave the World Behind

作者:Rumaan Alam
Publisher ‏ : ‎ Ecco
刊行日:October 6, 2020
Hardcover ‏ : ‎ 256 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0062667637
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0062667632
適正年齢:一般(PG12)
読みやすさ:8
ジャンル:文芸小説、スペキュラティブフィクション
キーワード、テーマ:世紀末、災害、家族、人間心理、社会考察

NY在住の高収入の白人共働き夫婦が15歳の息子と13歳の娘と一緒にロングアイランドでの夏のバケーションに出かけた。Airbnb(エアビーアンドビー)で借りた別荘はビーチの近くでプールもある。そこでくつろぎかけた時に高齢期にさしかかった黒人夫婦が現れ、この別荘の持ち主だと名乗る。マンハッタンで停電が起こったのだが、それがさらに広がっている。危機感にかられた彼らは別荘に避難することにしたと言う。家族はしぶしぶ持ち主を迎え入れた。

スマートフォンにニュース速報のプッシュ通知が現れたが、意味不明のものだった。そして、その後ニュースが途絶えてインターネットも繋がらなくなる。都市部から離れた森に囲まれた場所なので、世界で何が起こっているのかわからない。不気味な静けさの中、鹿の大群が目撃される……。

2020年10月に刊行され、全米図書賞の最終候補にもなった作品だが、読者評価の平均はかなり低かった。一つ星評価も多い。あまり期待せず2021年に読んでみたところ、素晴らしい作品だと思った。娘に感想を尋ねたところ「面白かった」と言う。「これを読まずして年は越せないで賞」の審査員であるまやさんの評価も高かった。なぜこのような違いが出たのか考えていて「ああ、これは長い短編小説なのだ!」と思いついた。

長編小説ではプロットが重要であり、読者もそれを期待する。世紀末小説であれば、災害が起こり、その内容が明確であり、最後になんらかの結論がある。写真でいえば俯瞰撮影として絵になっていることが期待される。短編小説は被写体にもっと迫って詳細を写し出すクローズアップのようなものだ。つまり、見せたいものが異なるのである。

本作品は、人類が死滅するような災害があった場合に、個々の人々が感じることをリアルに描いている。インターネットが電話が通じなくなってしまったら、私たちは世界でどんな災害が起こっているのか、自分たちが何に対処しているのかまったく知ることはできない。終わりのほうに、「私たちはシステムに対して無邪気な信頼(naive faith in the system)を抱いている」という表現があるが、本当にそうだと思う。気候変動や国際政治の不安定や(現在では新型コロナの)パンデミックに淡い危機感を抱いていても、文句を言っていても、どこかで大企業や政府が提供するサービスを信じて寄りかかっている。でも、システムが壊れたら、私たちはよくある災害小説のように戦う相手すら見つけることができず、途方にくれるだけだろう。

興味がある人は、「長編」ではなく、「長めの短編小説」だと思って読んでみてほしい。

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