読者を驚かせるエンディングを読んだ後、あちこちに隠されているRed herringを探すために読み直してしまったゴシックミステリ Daisy Darker

作者:Alice Feeney
Publisher ‏ : ‎ Flatiron Books
刊行日:August 30, 2022
Hardcover ‏ : ‎ 352 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1250843936
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1250843937
対象年齢:一般(PG15)
読みやすさ:7
ジャンル:ゴシック・ミステリ
キーワード、テーマ:家族の秘密、密室殺人、復讐、英国コーンウォール、孤島

Daisy Darkerは、最愛のNana(おばあちゃん)の80歳の誕生日に行くためにロンドンからコーンウォールにかけつけた。両親が離婚してから三姉妹の面倒をよくみてくれたNanaの住むお屋敷は、満潮時には町から切り離されてしまう小さな島にある。先天的な心臓の病を持つDaisyを無条件で愛してくれたNanaは有名な児童書作家で、代表作シリーズの主人公はDaisyと同じ名前だ。

Nanaの誕生日はハロウィーンで、80歳の特別な誕生日である今年は、離婚している両親FrankとNancy、Daisyの5つ年上の姉Roseと4つ年上のLily、Lilyがティーンの時に産んで現在15歳の娘Trixie、というDarker一家全員が集まった。Nanaは、孫のTrixieが就寝した後で、集まった家族に自分の遺言の内容を伝えた。Trixieは屋敷とその維持費としての現金を、Daisyは彼女が選んだ慈善団体への大金の寄付を約束してもらったが、それ以外の家族が受け取るのは侮辱としかいえないモノだった。遺産を期待していたFrankが憤っている最中に予期していなかった訪問者が現れた。それは、Nanaが家族のように扱ってきたRoseと同い年のConorだった。Daisyが13歳の時のハロウィーンの日に起きたある出来事のために、それまで仲が良かったRose, Lily, Conorは口をきかないようになり、その原因になったDaisyを3人とも無視するようになった。子どもの頃に淡い恋心を抱いていたConorが現れ、Daisyは動揺した。

真夜中にTrixieが台所でNanaの死体を発見した時、レシピが書かれていたはずの黒板に家族のメンバーについてのシニカルな詩が書き込まれていた。Nanaの死に続き、家族がひとりずつ殺され、その部分の詩が線で消されていく。残った者は互いを疑い始める…。

作者もメンションしているように、アガサ・クリスティの『And Then There Were None』のオマージュであることがよくわかる。それにゴシックの要素が加わり、「これは舞台劇にすると面白そう」という想像が膨らむ。

前作Rock Paper Scissorsもそうだったが、好感を抱ける登場人物がいない(犬には好感がいだける)のがAlice Feeneyの特徴とも言える。特に、愛する価値がなく、愛される資格がまったくない男性が複数の女性の愛情の対象として登場するのが不思議なのだが、それが故意なのかどうか、未だに判断に苦しんでいる。

そういった疑問は消えないのだが、読者を騙す複雑な仕掛けを巧みにつなぎ合わせていることに感心しているうちに、人物の歪んだ性格すら楽しめるようになってくる。

Daisyの「秘密」が明らかになる驚きの最終部分を読み終えた後、もう一度最初からred herringを探すために読み直してしまったくらいred herringそのものが面白かった。

作者にうまく騙されてみたい読者におすすめ。

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