2022年ノーベル文学賞受賞者アニー・エルノーの作品を英語で読んでみる A Woman’s Story

作者:Annie Ernaux
Publisher ‏ : ‎ Seven Stories Press
刊行日:May 1, 2003
原書の言語 ‏ : ‎ フランス語、翻訳者:Tanya Leslie
Paperback ‏ : ‎ 96 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 9781583225752
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1583225752
対象年齢:一般(PG15+)
読みやすさレベル:6
ジャンル:自伝的小説、中編
キーワード:女性の一生、古い世代からの社会の変化
2022年ノーベル文学賞受賞作家

2022年ノーベル文学賞はフランス人の女性作家Annie Ernauxが受賞した。スウェーデン・アカデミーは、”for the courage and clinical acuity with which she uncovers the roots, estrangements and collective restraints of personal memory.それらを使って個人的な思い出の根源、疎外感、集合としての制約を暴露する作者の勇敢さと冷静で論理的な鋭敏さに対して)”と理由を説明している。

ノーベル文学賞は人々の期待や予測を裏切ることで有名である。今年は、7月にステージ上で襲撃されたサルマン・ラシュディが本命視されていたので、やはり多くの人の予測を裏切ったことになる。

Annie Ernauxはフランスではよく知られた作家だが、アメリカではあまり有名ではない。年下の既婚者との情事を描いたSimple Passion(『シンプルな情熱』)が知られているが、読んでいて「だから何なのだ?」という気がしてならない。『新・ジャンル別洋書ベスト500プラス』で紹介したマルグリット・デュラスや若い頃に読んだ山田詠美の小説を思い出したが、私にとっては彼らの作品のほうがインパクトが強かった。

晩年にアルツハイマーに罹患した母親が亡くなった直後から彼女の一生について書き始めたというフォームのA Woman’s Storyは、今とは異なる社会的な制約があった時代の女性の生き方を描いたものであり、Simple Passionより共感できるところがある。clinical acuityとアカデミーが表現したように、少し距離がある冷静で論理的な視点なのだが、それゆえに作者の母親に近づくことができないもどかしさがあった。

Ernauxを英語で読む利点は、文章が非常に簡単で理解しやすいことと、ページ数が少ないことである。ノーベル文学賞受賞者の中では最も読み切りやすい作家のひとりだと思うので、英語でトライする価値はあるかもしれない。

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