Me Before You やThe Giver of Starsを期待するとがっかりするJojo Moyesの最新作 Someone Else’s Shoes

作者:Jojo Moyes
Publisher ‏ : ‎ Pamela Dorman Books
刊行日:February 7, 2023
Hardcover ‏ : ‎ 448 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1984879294
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1984879295
対象年齢:一般(PG12、クリーン)
読みやすさレベル:6
ジャンル:Chick-lit(女性小説)
テーマ、キーワード:シスターフッド、コメディ、復習

アメリカで極貧の子供時代を送ったNishaは、その過去を捨て、美貌を武器に自分を作り変えてきた。そして富豪と結婚して裕福な暮らしをしてきたのだが、愛人を作った夫から突然捨てられる。

Sam(女性)は仕事ができるのに職場の男性ボスからの執拗ないじめにあっている。けれども、鬱になって家にこもって何もしない夫と批判や文句ばかり言うティーンの娘がいる家庭に安らぎはない。家に戻ってから家事を片付け、老犬の失禁の世話もし、何もかも押し付けてくる両親の対応で毎日でヨレヨレになっている。スポーツジムの更衣室で間違ってNishaのバッグを持ち出してしまったSamは、クライアントの訪問があるのでそのバッグに入っていたクリスチャン・ルブタンのハイヒールとクリスチャン・ディオールのジャケットを着るしかなくなる。予想もしていなかったのは、ルブタンのハイヒールが与えてくれた自信だった。

夫によってホームレスで一文無しにされたNishaは着る服と靴まで奪われてしまう。夫は「ルブタンの靴を返せば離婚の賠償金を出してやる」と条件をつけるが、その靴がない。打たれ強いNishaは、靴を探し出そうとする…。

スポーツジムでバッグが交換されてしまったのをきっかけに異なる境遇の女性二人がめぐりあい、それぞれの人生を立て直すために協力するようになる…コメディ的な軽いチックリット(女性小説)であり、これが20年くらい前に書かれたもので、作者がJojo Moyesでなければ「軽く楽しめる典型的な英国のチックリット」ということで3つ星(5星中)評価だったと思う。けれども、2023年にこれはないだろう、と呆れてしまった。

そもそも、ものすごく高価なハイヒールを履くことがビジネスウーマンに自信を与えて人生まで変えてしまうというのは、使い古されたclichéであるだけでなく、リアルの世界でリアルな仕事を頑張っている女性に対する侮辱だと思うのだ。私も靴とバッグが大好きだけれど、「これは高い靴・バッグ」というお決まりのネームブランドは大金持ちになっても絶対に買わないと決めている。他にももっと美しくて履きやすくて、自分を出してくれるファッションはいくらでもあるし、そういう「誰もがわかる」ブランドでないと自信をつけることができないというのは、ちょっと情けない。

このドタバタコメディ的な小説で「男性たちによって踏みつけられた女性が力をあわせて復習する」という部分に惹かれる女性読者もいるだろうが、ひとりの女性読者として、この2人の思考回路には唖然とすることばかり。コメディとはいえ、ちっとも笑えなかった。Samの家族も全員が呆れた行動をするのだが、いずれも「それは人間としてだめでしょ」というのを反省しないまま終わるので、モヤモヤ感が残る。

英国のチックリットはこういうのが多いので私は苦手なのだが、私の苦手が満載で、久々に「売れているけれど駄目な本」にカテゴライズしてしまった。

Me Before You (『ジャンル別洋書ベスト500』に収録)や The Giver of Stars(『新・ジャンル別洋書ベスト500プラス』の文芸ショートリストに収録)のJojo Moyesを期待している人はご注意を。とはいえ、一般の読者は好きなようで、平均的な評価は高いから、興味がある人は私のネガティブな評価を無視してお試しあれ。
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