作者:David Ellis
Publisher : G.P. Putnam’s Sons
刊行日:July 5, 2022
Hardcover : 464 pages
ISBN-10 : 0399170928
ISBN-13 : 978-0399170928
対象年齢:一般(R)
読みやすさレベル:8
ジャンル:心理スリラー、犯罪小説
テーマ、キーワード:詐欺、復習、複雑なプロット、どんでん返し、game of cat and mouse(両者が相手を出し抜こうとして追いつ追われつの「いたちごっこ」)
SimonとVickyは裕福な郊外によくいそうな典型的な夫婦だ。Simonは大学で法律を教えており、Vickyはドメスティック・バイオレンスのアドボケイトをしている。けれども、2人には秘密がある。Simonの父親は20ミリオンダラー(約28億円)という大金の信託基金を息子に残しているのだが、これは10年結婚した後でないと受け取ることができない。結婚10周年記念の後に離婚するつもりのVickyは、その資金を管理するプロを雇い、その男と情事を始める。そして、Simonのほうも過去に関わりがあった既婚の女性と情事を始めるが、Vickyを愛しているので10周年までは離婚しないと言い続ける。
その10周年を目前に、ハロウィーンの夜のSimonの情事の相手が殺害された。ふだん犯罪がない裕福な郊外の町で起こった殺人事件なので、住民たちは早期に解決するように警察にプレッシャーをかける。事件を担当した女性刑事のJaneは、Simonの昔の同級生だった。同僚や上司が出す結論に納得できないJaneはSimonを疑う…。
たぶん読者は最初のいくつかの章で、SimonとVicky、そして彼らの情事の相手について「こういうことだろう」とわかったつもりになると思う。ところが、すぐにそれが目くらましだとわかってくる。そして、わかったと思ったら、またどんでん返しになる。500ページ近くもある長い小説だが、すべての章に何らかの「驚き」が含められていて、飽きることがない。
それぞれ自分が最も賢いと思っている登場人物たちが「Cat and Mouse」のゲーム(両者が相手を出し抜こうとして追いつ追われつの「いたちごっこ」)をするのがこの小説の醍醐味である。作者は、かのジェームズ・パターソンとの共著シリーズを書いていたのだが、パターソンから学んだと思われるテクニック(各章を短くする、どんでん返しを入れる)などを感じる本でもある。
ちょっと凝りすぎていて心理面で納得できない部分はあるが、若手の弁護士として活躍し、現在は裁判官をしている法律のプロが書いたものだけに、詳細が面白い。
少々長めだが、決して飽きないので、最後まで驚かせてほしい読者におすすめ。