Twilightシリーズの再来と騒がれて米国で大ベストセラーになっているドラゴン・ライダーのミリタリー・ファンタジー。 Fourth Wing

作者:Rebecca Yarros
Publisher ‏ : ‎ Entangled: Red Tower Books
刊行日:May 2, 2023
Hardcover ‏ : ‎ 528 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1649374046
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1649374042
対象年齢:20代のニューアダルト(R:セックスシーン描写レベル:4
読みやすさレベル:6
ジャンル:ミリタリー・ファンタジー、ロマンス
テーマ、キーワード:ドラゴン、ドラゴン・ライダー、軍隊、ロマンス(enemy-to-lover)、魔力
シリーズ名:The Empyrean

学問が好きなVioletは、亡き父のように国の歴史を記録する書士であり学者の「Scribe」になることを夢見て勉強してきた。その組織であるScribe Quadrantに加わるためのテストに合格する夢の実現を目前にし、軍隊の司令長官の母からdragon riderになるよう命じられた。dragon riderは国の軍隊のエリートであり、士官学校のテストでは多くの者が命を落とす。母だけでなくVioletの兄と姉はdragon riderの中でも超エリートとして知られていたが、彼らとは異なり、Violetは生まれつき身体が小さくて、虚弱体質だ。姉は「士官学校にVioletを送り込んだら、殺すようなものだ」と反対するが、母は「dragon riderになるのがSorrengail家の使命だ」と聞き入れない。

Violetが拒否しても、国王に近い地位にある母は力づくで入学テストを受けさせることがわかっている。Violetは死を覚悟でテストに挑む。

入学テストになんとか合格して士官学校に入学したものの、Violetの周囲は敵だらけだ。司令長官の母によって親を処刑された子供たちや、Violetの身体の弱さを忌み嫌って殺すことを誓う同級性….。それらの危機にさらされながらも、Violetはサバイバルのためにタフになる努力をしていく。

士官学校の学生リーダー(wingleader)のXadenの父親は、謀反罪でVioletの母に処刑された。Violetを破壊することを公言していたXadenだが、実際には親友以上に彼女を理解し、軍人として、そしてdragon riderとして成長することを励ます。

しかし、Xadenも母も、そして国家そのものがそれぞれに大きな秘密を抱えていた…。

このFourth Wingは、(2005年に刊行されて爆発的に売れた『トワイライト』シリーズにちなんで)「Twilight現象」と呼ばれるほどアメリカで大きなベストセラーになっている。

読んでみたところ、作者に影響を与えたベストセラー作品の数々が次々に目に浮かぶ。たとえば、ドラゴン・ライダーものとしては古典的なDragonriders of Pern (by Anne McCaffrey)、Temeraire シリーズ(by Naomi Novik)、Harry Potterシリーズ(by J.K. Rowling), The Hunger Games (by Suzanne Collins)などだ。ドラゴンものが好きなベテラン読者にとっては、新鮮な要素はほとんどない。

この作者が優れているのは、これまでの作品の中から「読者がぐっとくる要素」を抽出し、それらをふんだんに取り入れて飽きない娯楽作品にしているところだ。身体の弱いヒロインがボロボロになりながらも頭脳と努力でタフになっていき、誰からも羨まれるようなドラゴンから選ばれ、パワフルな才能を発揮するところが読者に快感を与える。作者の夫は最近退役したそうだが軍人として戦地に赴いてきた。軍人の妻としての知識がドラゴンの士官学校の設定にも活きていて、映画『トップガン』的な要素もたっぷりだ。それに加えて、Twilight的なenemy-to-loverのロマンスが入っている。TikTokの女性ユーザーの間で盛り上がって売れたのがよくわかる。

しかし、私はこのロマンスの部分でうんざりしてしまった。露骨なセックスシーンが悪いというのではなく、この恋愛部分で突然TikTokの若い女性読者向けのセンチメンタルなロマンス小説(ニューアダルト)になってしまうのだ。そのために、ミリタリー・ファンタジーあるいはドラゴン・ライダーものファンタジーとしての価値がぐぐっと下がってしまった。この部分を抑えておいたら、男性読者やシリアスなファンタジー読者にもアピールできたのに、そこが残念だ。

クリフハンガーな終わり方だが、第二巻が発売されたところなので、続きを読みたい人にはラッキーだ。

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