作者:Heather Fawcett
Publisher : Del Rey
刊行日:January 10, 2023
Hardcover : 336 pages
ISBN-10 : 059350013X
ISBN-13 : 978-0593500132
対象年齢:一般(PG12)
読みやすさレベル:6
ジャンル:ファンタジー
テーマ、キーワード:妖精、冒険、ロマンス
ケンブリッジ大学の教授Emily Wildeは妖精の研究にかけては誰よりも情熱的で優れた才能があることを自負している。けれども女性であることと人付き合いが苦手な性格が障壁になり、テニュア(終身雇用)の地位への昇進が遅れている。テニュアになれば研究費の工面での苦労が減り、さらに研究に没頭することができる。Emilyはそのためにも世界初の妖精の民間伝承の辞典を完成させて揺るぎない実績を上げることを決意していた。
Emilyはこれまでよく知られていない妖精の現地調査を行うためにスカンジナビア(たぶんノルウェイ)の小さな村Hrafnsvikにたどり着いた。けれども、人の感情やその場の「空気」を読めないEmilyは借りた小屋のオーナーや村を取り仕切る女性に嫌われてしまい、食べ物や薪も手に入れられない状況になる。
それでもあまり気にせずに研究を進めていたのだが、そこにケンブリッジ大学の同僚で研究のライバルであるWendell Bamblebyが突然現れる。アシスタント2人を下僕のようにひきつれてやってきたWendellは、Emilyが招きもしないのに勝手に小屋に入り込み、居着いてしまう。
ひとりで研究に没頭するために借りた小屋に、村の若い女性たちを次々と誘惑して連れ込むWendellにEmilyは苛つくが、それよりもEmilyを苛立たせるのは、自分を嫌っている村人たちをWendellがいとも簡単に魅了してしまうことだ。
Emilyは以前からWendellが人間社会に追放された妖精であることを疑っていた。それも高い地位にある者だ。EmilyがWendellの魔術に簡単に騙されてしまわないのは、妖精の研究者としてそれに抗う訓練を積んできたからだ。WendellはEmilyの研究を援助することを提案するが、彼がこの村に来たのには別の理由があるとEmilyは推察する。
この村では、昔から妖精によるひとさらいが何度も起こっており、changeling(欧州の民話によく登場する妖精の「取り替え子」。人間の子供をさらった後に身代わりの妖精の子供を置いていくというもの)もいた。誘拐はしばらく収まっていたのに、changelingが現れてからひとさらいが増えているのには理由があるとEmilyは直感する。
孤立していたEmilyを助けてくれた数少ない住民である女性カップル2人がさらわれ、Emilyは彼女たちを救い出すために妖精の世界に入り込む。しかし、残酷な妖精の王に気に入られてしまったEmilyは抜け出すことができなくなる…。
北欧の不思議な妖精の世界が興味深く、登場人物のユニークさも活きている。EmilyとWendellの関係は、『ハウルの動く城』の原作であるHowl’s Moving Castleを読んだことがある人ならSophieとHowlを連想することだろう。私が娘に「これ面白いよ」と薦めたところ、途中まで読んだ娘が「なぜマミーがこの本好きだかわかった。これ、SophieとHowlだよね」とメッセージを送ってきたくらいだ。
Wendellが人間界に追放された理由とそれによる危機については第2巻に引き継がれるのだが、この本では、貴族らしくふだん怠け者なのに下級の召使いレベルの妖精だったおばあちゃんの血をひいているおかげで掃除と裁縫が大好きなWendellの後半の活躍が素敵だ。
現実世界で疲れていて、しばし別の世界に逃げ込みたい方にオススメ。
シリーズ第2巻もすでに出ていて、こちらもさらに面白い。シリーズが続くことが予想される終わり方。



