作者:Ashley Elston
Publisher : Pamela Dorman Books
刊行日:January 2, 2024
Hardcover : 352 pages
ISBN-10 : 0593492919
ISBN-13 : 978-0593492918
対象年齢:一般(R)
ジャンル:犯罪小説、サスペンススリラー
テーマ、キーワード:犯罪組織、Cat and Mouseの心理ゲーム
Evie Porterの新しいボーイフレンドRyan Summerはハンサムでリッチ。そのうえEvieにぞっこん惚れこんでいて、知り合ってあまり時間がたっていないのに同棲を持ちかけてきた。けれどもEvieはこの関係がハッピーエンドになることはないと知っていた。というのも、Evie Porterは彼女の本名ではなく、Ryanは新しい仕事でのターゲットだからだ。
貧しい母子家庭で育ったEvieは、数年前に母の病気の治療費を工面するために犯罪に手を染めるようになった。逮捕されそうになったEvieに仕事を提供したのが現在のボスであるMr. Smithだった。ごくたまに電話で話すだけのMr. Smithは機械で声を変えているうえにコンタクトの方法は厳密に操作されている。彼の素性はまったく不明なままである。そして、Mr. Smithは時折自分の元で働く者をテストすることでも知られていた。
前回の仕事で大きな失敗を犯したEvieは、今回の仕事での失敗が許されないことを知っている。いったんMr. Smithのもとで働いたら抜け出すことはできない。他人に知られてはならない秘密を知りすぎているからだ。
Mr. SmithはRyanに近づくように指示しただけで、何が目的なのかはまだEvieに伝えていなかった。常に一手先を読むEvieはRyanが父と祖母から引き継いだテキサスのビジネスに関連したことだと推察し、Ryanに隠れて情報を集める。
そんな時に、Ryanの昔なじみが町に戻り、Evieにそっくりの女性をガールフレンドとして紹介した。そればかりか、その女はEvieの本名を名乗ったのである。Mr. Smithしか知らない自分の本当のアイデンティティを持つ女性の出現にEvieは動揺した。これは何を意味するのか?
次々に起こる予期しない出来事に追い詰められたEvieは、生き残りをかけてMr. Smithを出し抜く策略を練る…。
いわゆる「Cat and Mouse(いたちごっこ)」トムとジェリーのように互いが相手を出し抜こうとする心理ゲームであり、それはこれまでのスリラーでもよく使われてきた手法だ。でも、この本を特別なものにしているのは主人公のEvieの賢さだ。リッチな男性をたぶらかす典型的な女性のふりをしながらも相手と周囲の人間の言動を常に分析して先手を打つ。
はらはらドキドキしながらあっという間に読み切ってしまう類の心理スリラーであり、しかも読了後に「なんと巧妙な!」と感心してしまう。
よく読者は女性主人公がlikable(好感をいだきやすい性格)であることを求める。そして、そのlikableの条件が、どんな相手にも優しいということだったりする。Evieはれっきとした犯罪者で典型的なヒロインではない。けれども、彼女には彼女の独自の「行動規範」や「倫理観」がある。そこが魅力であり、きっとlikableと感じる読者はいるだろう。誰一人純粋な善人が出てこないのもこの心理スリラーの魅力と言えるかもしれない。


