
作者:Crystal King
Publisher : MIRA
刊行日:September 24, 2024
Hardcover : 336 pages
ISBN-10 : 0778310574
ISBN-13 : 978-0778310570
対象年齢:一般(R)
読みやすさレベル:6
ジャンル:歴史ファンタジー
テーマ、キーワード:ギリシャ神話の改作、歴史小説、ゴシック・ロマンス、Pluto & Proserpina(プルートとプロセルピナ、ギリシャ神話ではハデスとペルセポネ)、サルバドール・ダリ、ガラ、ボマルツォの「森の怪物公園(Parco dei Mostri、パルコ・デイ・モストリ)、歴史的グルメ料理
1948年。イタリアでアートを学ぶアメリカ人女性Julia Lombardiには、イタリアに来るまでの記憶がない。才能はあるが女性ゆえにアートで生計を立てる将来に不安を抱くJuliaは、思いがけないチャンスを得る。オペラ座での舞台セットをデザインするためにローマを訪れているサルバドール・ダリのモデルになるというものだ。大金のオファーもさることながら、有名なアーティストの仕事から学ぶ機会が魅力だった。
ただし、そのためにはローマの北にある小さな町ボマルツォの「Sacro Bosco(聖なる森)」の邸宅でサルバドールとガラの夫婦と一緒に過ごさなければならない。彼らは人気者だったが、同時に悪評も多かった。実際に会った2人は想像以上にエキセントリックだったが、Sacro Boscoの怪物の公園はダリ夫婦よりも謎めいていて不気味だった。
ボマルツォに到着したJiliaは、この地を支配していた貴族オルシーニ家の豪邸に魅了されると同時に、ミステリアスな執事や庭園にある怪物の彫像に不安を覚える。冥界の王に誘拐されたProserpina(プロセルピナ)を描くためにJuliaを雇ったダリは、Juliaの名前を使わずに「プロセルピナ」と呼び続け、豪邸の持ち主にリクエストした豪華な料理に含まれているザクロを食べるように強要する…。
冥界の王と女王は、ギリシャ神話ではハデスとペルセポネとして知られるが、ローマ神話ではプルートとプロセルピナである。春の女王であるプロセルピナに一目惚れしたプルートが彼女を略奪して冥界につれていくという筋書きだが、この小説ではその部分よりも冥界の王と女王の複雑なラブストーリーと輪廻転生がテーマになっている。
それに加えて実在の人物であるサルバドール・ダリとダリの妻ガラがこの小説をユニークにしている。作者のキングは資料やノンフィクションでこの2人についてかなり調べたようで、ダリのナルシストぶりやガラの傍若無人ぶりはリアリスティックだ。
実際にダリは1948年にSacro Boscoを訪問していて、こういうフィルムも録画している。怪物の庭園の当時の雰囲気を観てからこの小説を読むと、想像しやすくなると思う。
作者は歴史と料理の歴史に詳しく、Feast of Sorrowでは1世紀ローマ帝国、The Chef’s Secretではルネッサンス時代のイタリア、そしてこの本では20世紀中期のイタリアの豪華な料理を描いている。エキゾチックな料理の数々は、読んでいるとつい味見したくなってしまう。
ゴシック・ロマンス的な印象があるが、私にとってはSacro Boscoの不気味な雰囲気そのものを楽しむホラーバケーション小説だった。オーディオブックも試したが、紙媒体のほうがお薦め。
*作者のCrystal Kingは知人であり、ARCを出版社から頂きました。ただし、オーディオブックは自費で購入しています。

