
作者:Charlotte McConaghy
Publisher : Flatiron Books
刊行日:March 4, 2025
Hardcover : 320 pages
ISBN-10 : 1250827957
ISBN-13 : 978-1250827951
対象年齢:一般(R)
読みやすさレベル:8
ジャンル:文芸小説、近未来小説、ミステリ
テーマ、キーワード:気候変動、種の存続の危機、喪失体験、悲嘆、自然、家族、愛
ニュージーランドと南極の中間地点にあるMacquarie Island(オーストラリア領の無人島マッコーリー島)をモデルにしたShearwaterが舞台。
Shearwaterには世界最大の種子銀行があり、かつては多くの研究者が滞在していたのだが、現在では住民はSalt一家のみになっていた。父親のDominicは妻の死後さらに寡黙になり、18歳の長男Raffは初恋の相手の死の影響で時折憤りを爆発させている。17歳の少女Finはアザラシが生息している浜辺で夜を過ごす。そして生物学に熱中している9歳の末っ子Orlyは種子の未来を案じている。
海面上昇と頻発する嵐の影響で島は消えゆく運命にあり、Salt家の4人も数週間後に島を離れることになっていた。
これまでにないほどの大きな嵐のさなか、島に向かっていた小さな船が転覆して溺れていた女性をFinが救った。部外者の女性Rowanに対してDominicは警戒心を抱くが、瀕死の彼女の世話をするうちに家族は絆を深めていく。
母親からの心理的虐待を受けて育ったRowanは、気候変動で生存の危機が危ぶまれる世界で子どもを生むのは無責任だと感じていた。それと、子どもを失う恐怖も。だが、子どもを欲しがっていた夫は、Rowanが愛していた家が山火事で消失した直後にShearwaterの研究施設の主任の仕事をみつけ、打ちのめされている妻を傷つける言葉を投げかけて去ってしまったのだった。Rowanは、その夫からの救いを求めるメールに応じて島にやってきたのだが、Dominicは彼は既に島を離れたと言う。そして、この話題になると子どもたちも口をつぐんでしまう。Rowanは彼らが何かを隠していることを察知するが、それが何なのかはわからない…。
気候変動をテーマにした近未来小説はこれまで数多く読んできたが、南極に近い小さな島を舞台にしたこの小説ほどリアルに感じるものはなかった。私自身が南極に行ったことがあるので、荒れ狂う海やペンギンのコロニーの描写など、あたかもそこにいるような感覚に陥った。厳しい自然の美しさと、滅亡に直面した多くの種、そして、終末を肌感覚で実感した時の人々の行動、家族のあり方、山火事を生き延びたウォンバットの逸話…どのページからもインパクトを感じずにはいられない。
登場人物はいずれも「喪失」を体験している。そして、その体験をgriefとして引きずっている。彼らはこれ以上失うことを恐れているが、住処である島もじきに海に飲み込まれることがわかっている。そして、島にある世界中の種子をすべて救うことはできない。
すべてを失う危機に直面したとき、人は何を選ぶのか? Rowanの最後の選択には涙せずにはいられない。
文芸賞の候補や大手メディアの「今年のベスト本」に選ばれる予感がする作品である。

