Eat, Pray, Loveの作者Elizabeth Gilbertの「その後」回想録 All the Way to the River

 

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作者:Elizabeth Gilbert (Eat, Pray, Love)
Publisher ‏ : ‎ Riverhead Books
Publication date ‏ : ‎ September 9, 2025
Print length ‏ : ‎ 400 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0593540980
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0593540985
対象年齢:一般(PG15+、ドラッグ、セックス依存症のテーマ)
読みやすさレベル:6
ジャンル:回想録、人生指南
テーマ、キーワード:愛と喪失、薬物、アルコール、依存症、共依存、同性愛、有害な関係(toxic relationship), パートナーの死、スピリチュアリティ、回復

Elizabeth Gilbertは2006年刊のベストセラー回想録『Eat, Pray, Love』の作者として有名だ。本を読んでいなくてもジュリア・ロバーツ主演の2010年公開の映画『食べて、祈って、恋をして』を観た人は多いのではないだろうか。

この本(あるいは映画)でギルバートのイメージを抱き、その後まったく彼女の作品に触れてこなかった人は、今月(2025年9月)に刊行された最新の回想録『All the Way to the River: Love, Loss, and Liberation』を読んだら驚くか、あるいは複雑な心境になることは間違いない。

ギルバートは『Eat, Pray, Love』の予期しなかった大ヒットにより経済的成功を収めた。思いがけない大金を手にしたギルバートは周囲の人々の治療費、学費、結婚式の費用を肩代わりし、2008年の金融危機の時には、地域の小さなビジネスのオーナーたちに「お金が必要ですか?」と自分から声をかけて歩くなど通常から逸脱した慈善行為を行った。でもそれは純粋な行為ではなく、人々から愛されたいという渇望が原動だいう自覚もあった。

この回想録の中でギルバート本人が繰り返し語っているのが彼女の「恋愛依存症(sex and love addiction)」だ。素晴らしいパートナーと結婚していても、別の魅力的な人から「愛されたい」「求められたい」という渇望を捨てることができず、行動に出たい衝動と常に戦っている。この本の大きなテーマのひとつ「愛と喪失」そして「共依存」の対象であるRayyaと出会った時、ギルバートはEat, Pray, Loveに登場したFelipe(実名はJosé Nunes)と結婚していた。Rayya(レイヤ)は知人からの紹介で出会ったクイアのヘアドレッサーで、2人はすぐさま誰よりも仲が良い親友になった。

レイヤとギルバートは早期から惹かれ合っているのを感じていたが、ギルバートは良いパートナーである夫を裏切る悪者になりたくないのでプラトニックな関係を保ってきた。けれどもレイヤが末期がんであることが判明したときにギルバートは夫と離婚してレイヤとパートナーになることを決めた。

『Eat, Pray, Love』はロマンス小説のようにハッピーエンドが約束されている回想録で、明るい自己啓発的なところがあった。それに惹かれたファンが多かったと思うのだが、『All the Way to the River』はそのイメージを破壊する。「いい人」であろうとしつつも、欲望に忠実でありたいギルバートが葛藤を繰り返す。そこには、レイヤの薬物・アルコール依存、レイヤとギルバートの間の共依存、そしてギルバートの恋愛依存症という多くの依存症が絡み合う現実の醜さがある。

2人の関係の醜さをさらけ出し、自分の心理的、倫理的葛藤を正直に語り、そのうえで「自己を超えた存在(多くの人にとっては「神」)」にすべてをゆだねることで依存症と恋人の死を乗り越えた体験を語るギルバートを勇敢だと感じる読者もいることだろう。実際にこの本はオプラ・ウィンフリーのOpra’s Book Clubにも選ばれているし、ベストセラーにもなっている。

けれども私は、この本に感動するよりも疲れてしまった。『Eat, Pray, Love』でのギルバートは人生での悟りを得たようだった。だから「Eat, Pray, Loveをすればギルバートのように素敵なパートナーと出会い、経済的な成功を収めることができる」と信じて真似をしようとした読者は多かった。でも、読者が幸せを掴むずっと前にギルバート本人がその平穏な幸福に飽きて自己破壊的な依存症に没頭していこうとしていたのである。また、ギルバートがどんなに美化しようとしても、レイヤと彼女は2人ともナルシスティックであり、2人の関係はtoxic(有害)だった。だから、この本でギルバートがどんなに「正直に」愛と喪失と救済を語り、読者を説得したとしても、彼女自身がすぐにそれを裏切りそうな気がしてならないのだ。

人生での人間関係ドラマをなるべく避けたいと思っている私にとっては、他人のことだとはいえ、読んでいて辛いだけで得るものが少ない回想録だった。

共依存とtoxic relationshipを描いた現代小説だと思って読むほうが良いかもしれない。

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